海常高校男子バスケ部の朝は早い。朝6時に起きて、10分から15分で朝ごはんを食べる。5分で寝癖を治して歯磨きをして洗顔をする。そして5分で制服に着替えて身支度を整える。そして起きてから約30分でわたしは家を出る。お母さんの作ってくれたお弁当をかばんに入れて、家を出た。春先の朝はまだ寒い。自転車に跨ったがサドルが冷たくてお尻が冷えた。今日はいつもより早めに出れたのでゆっくり漕げる。5分漕いで、電車に乗って15分。そしてまた歩いて5分。6時50分、バスケ部の体育館に到着だ。更衣室でジャージに着替えて、朝の練習用のドリンクを準備して体育館に入ると、ちょうど7時。


「お願いします!」


挨拶をして体育館に入ると、すでに部員は全員揃っていた。あれ、今日は早く来たつもりだったのにな。まったりしすぎただろうか。慌てて集合している輪の中に駆け寄り、軽く頭を下げた。


「すいませーん…」
「遅いぞ綾瀬」
「うるさい森山、ギリギリセーフでしょうが」
「凛先輩珍しいッスね!ちなみに俺は先輩の次に遅かったッス!」
「それ自慢にならないから」
「無駄口叩くな!いいから始めるぞ!」


笠松の掛け声と共に始まる海常高校男子バスケ部。そして、わたしの、わたしたちの1日が始まるのである。もうすっかり慣れたこれが日常。



8時、練習が終わって片付けて教室へと向かう。男子部のマネージャー用の部室を出ると、外でもう笠松と森山、小堀が待っていてくれた。


「ごめん!」
「綾瀬は今日何しても遅刻だな」
「これは遅刻にはならないでしょ!」
「うっせー!行くぞ」


生徒が忙しなく行き交う狭い朝の廊下を2列になって歩く。森山は先程の口の悪さを小堀に宥められていた。小堀ほんとのいい人。自然と、わたしの横に並ぶのは笠松である。


「おはよ、笠松」
「はよ。珍しいな、今朝」
「うーん、早く出たつもりだったんだけど、そのあとちょっとゆっくりしちゃったのかな」
「まああんま急いで何かあったら困るし、気をつけてこいよ」
「わかってるってばー」


ほんとかよ、と言っているかのようなため息をつかれて、頭を雑にくしゃりと撫でられた。あ、さっきせっかく鏡の前でセットしたのに!でもこうしてもらえるのは嫌いじゃない、というよりむしろ好きだ。笠松の不器用な優しさは、好きなところのひとつ。


気がつけば前を歩く森山がこちらを見てにやにやしていた。笠松もそれに気づいたようで、耳を赤くしてそっぽ向いていた。わたしは思いっきり舌を出してやる。彼女のいない森山にはこんなことできないんだからね!


「羨ましいでしょ!」
「まさか。こんなじゃじゃ馬」
「失礼!笠松に!」
「俺かよ」


まあまあ、とこうなった時宥めてくれるのはいつも小堀である。ほんと小堀いい人!





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