何をしよう、と特に決めていたわけではない。とりあえずショッピングモールに向かった。


「ねー何したい?」
「何でもいい」
「じゃあ映画!あれ見ようよ!」


あれというのはアレだ。見た目は子ども、頭脳は大人のやつ。なんだかんだで毎年春先に必ず映画館に見に行っているのだ。部活が終わったあとにレイトショーで……ひとりで。だって次の日朝早いのに誘えないでしょ?春先の一日オフなんて本当に久しぶりなのだ。今人気のイケメン俳優が出てる恋愛映画も気になったけど幸男は興味ないだろうし、見たあとそれはそれは何とも言えない雰囲気になりそうなのは目に見えている。今度レイトショーで行こう……ひとりで。黄瀬誘ったら来てくれるかな。

チケットを買って、飲み物とポップコーンを幸男が買ってくれた。映画といえばポップコーンでしょ!と言ったらガキか、とため息交じりに返された。ガキでけっこう!キャラメルポップコーン美味しいもんね。映画がはじまり、ドキドキのシーンで思わず肩を震わせると、やっぱり隣からため息が聞こえてきた。でもそのあとちょん、と頭を撫でてくれたから色気のない映画を見るのもいいなあと思った。


終わって映画館を出ると、ちょうどお腹が空く時間だった。お昼時ということでどこも混んでいる。わたしのチョイスでオムライスのお店に並ぶ。いい匂いがプンプンするしお腹は鳴るしでこれはある意味拷問だ。幸男に聞こえていたら少し恥ずかしい。いやけっこう恥ずかしい。


「でかい音だな」
「聞こえてた!」
「いちいち気にすんなよ」
「あのねえ、デートなんだから気にします」
「今更だろ」


そうこうしているうちにお店に通されて、メニューを開いた。わたしはオムライスだけだけれど、幸男はサンドイッチのセットもつけていた。男の子ってほんとよく食べるね。しかもぜんぶ筋肉になるし。……少し悲しくなった。
幸男といれば待ち時間なんて全然苦じゃなくて、むしろその時間すら幸せに感じる。こうしてオーダーをとってもらって腹ペコで待っていても話すことは尽きないし、かといって沈黙がつらいわけではない。居心地がいいとはこういうことをいうんだろうと思う。


「久しぶりに見たけどおもしれえな」
「テレビで放送されてるのも見ないの?」
「あー……家族は見てるのかもしんねえけど考えてみればテレビなんてほとんど見てねえな」
「……よく考えればわたしもだわ」


毎日帰る頃には疲れと眠気が襲ってきていて、ご飯を食べてお風呂に入ってたまに出る宿題をやるときもあるが基本的にはすぐ寝て、そして朝練のために早起き。こんな生活をしていたらテレビなんて見なくなるし、学校で噂の人気の芸人とかモデルとか、そんなの全然わからなくなる。性格の問題もあるかもしれないけど。森山とか黄瀬はちゃんとチェックしてるし。ナンパなやつめ。


「たまに見るのもいいな」
「じゃあ夏あれ行こうよ、ポ○モン」


今何匹いるから知らないけどね、と言うと、幸男は笑った。自分だって知らないくせに!




130216



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