珍しく日曜日がオフになり、監督からは体をしっかり休めるようにと暗に自主練も禁止だという念押しまでされた。わたしはみんなみたいに体を使っているわけでもないし、久しぶりに買い物に行くか、それとも帰宅部の友達を誘って遊びにでも行くか、なんとなく考えていたら練習が終わったあと明日どこか行くか、なんて幸男が言うから驚いた。


「えっ休まなくて平気?」
「いつもみたいに体動かさなきゃいいだろ。家にずっといるのと落ち着かねーし」


そんなこと言われたら休んでと言いたいのに誘惑に負けてしまう。二つ返事でオーケーして、頭の中はすっかり明日のことだ。オフなんて随分久しぶりだし何をしよう。あんまり動き回るのは申し訳ないし、それに何を着て行こうかな、最近買い物なんてずっと行ってなかったし去年の服しかない。浮かれ気分で着替えて、駅までみんなで帰る時も森山の一人語りなんて少しも耳を傾けずふわふわお花畑モード。


「凛先輩、明日はどーするんスか?」


ふたりになったところで黄瀬に聞かれた。すっかり当たり前になった黄瀬との電車通学、帰りも特に用事がなければ一緒に帰るようになった。幸男は心配性すぎるのだ。


「え、聞いちゃう?聞いちゃうの?」
「あ!わかった、デートっスね!いけないんだ〜休めって言われたのに〜」
「笠松が言ったからいいの!」
「笠松先輩から誘ったんスか?意外と普通にカップルなんスね」
「ようやく最近ね。あとは笠松が異常に隠したがるの。性格的な問題もあるけど」


いいっスね、俺も出掛けようかな〜って黄瀬が言うから、黄瀬って友達いなそうだよねって返したら泣き真似してた。ウザい。でもついでだから明日何しようか相談したら黄瀬は親身になって聞いてくれて、一旦わたしの最寄りで降りてまで話に付き合ってくれたから、やっぱり可愛い後輩なのである。





日曜日。AM8:50天気は晴れ。
しっかり8時間睡眠をし、気持ちよく目が覚めた。しっかり朝ごはんを食べて。薄く化粧をする。髪もほんの少しだけ巻いてみた。あんまりゴテゴテさせると嫌な顔されそうだもの。そんな人ばかりではないのに、幸男の中の“女の子”のイメージはいつまでたっても騒がしいギャルなのだ。もっと世界が広まればと思う反面、このままでいてくれたほうが安心という我儘な自分にちょっとだけ自己嫌悪した。余計なことを考えるのはやめよう。去年の服で一番気に入ってた服を引っ張り出して着替えながら考えた。そういえば私服に着替えるのなんて随分久しぶりだ。……女としてどうなんだろう。





130202


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