仕事が終わって家に帰ってきたが、俺を出迎えてくれる彼女が今日は姿を見せなかった。

「ただいま」

普段より大きな声で言ってみるが反応はない。いつもならドアが開く音を聞いていの一番(と言っても家には彼女しかいないが)に俺を出迎えてくれるのに、どうしたんだろうか。寝ているのか。一緒に住むようになってしばらく経つが、こんなことは初めてなので不安になった。少々焦りながらリビングの扉を開けたが彼女の姿は見当たらない……と思ったが、よく見ると買ったばかりの大きめのソファに横たわって体を丸めて小さくなっているこの人物は、間違いなくおれの愛しい彼女だ。
髪が顔を覆っていたため、どんな表情をしているのか、起きているか寝ているかの判別もつかない。

「おい、大丈夫か?寝てんのか?」
「……あっ…静雄くん…帰ってたんだね、ごめんね、おかえり…」

俺の言葉に反応して体をゆっくりと体を起こし、ようやく彼女の表情が伺える。その顔は苦しそうに歪んでいて、額にはうっすら脂汗が滲んでいる。ここでやっと彼女の体調がただことではないことに気づいた。

「どうした?!いいから無理すんな!」

立ち上がろうとする彼女の体を押し戻して、隣に座って膝の上に寝かせた。俺よりも幾分も小さい彼女の力なんて普段からものともしていないが、今日は反抗もしなかったからなのかさらに小さくて、まるで少しでも俺が手を加えたら無くなってしまうんじゃないかと思うくらい弱かった。

「どっか痛いのか」
「お腹……月のあれだから、大したことじゃないの。…ごめんね」

謝ることなんかじゃないのに。自分のお腹に手を当ててさらに縮こまる彼女の手をどけて、そこに俺の手を当てた。そしてゆっくりとさする。薄っぺらいのに女特有の柔らかさがあって、服の上から撫でているだけなのになんだか気持ちいい。こんな撫で方でいいのだろうか。彼女を傷つけてはいないだろうか。不安になって覗き込めば、その顔は小さく短かい呼吸を繰り返しながらも少し笑っていた。

「静雄くんの手、大きくてあったかいね」
「そうか?」
「うん…優しくて素敵な手だよ」

彼女は俺の手を握ってそんなことをいう。何人もの人を傷つけていることをわっていて、俺のこの手を。
好きよ、まるでそう訴えるかのように、あいていた右手を引き寄せられて小さくキスをされた。ああ、なんて可愛いのだろう。女にとっては大変なことなのかもしれないが、こうしておれの目の前で苦しみながらも愛してくれる彼女の姿はとても愛しくて、その機能を授けた遠い昔の誰かに感謝すらしたくなる。この毎月のそれがいつか俺たちの素敵な未来の為になるのだろうか、なんて淡い想像を膨らませながら彼女の腹を撫でた。痛いならばいつだっていつまでも、俺がこうしてあげるから、だから一生彼女の隣は俺の場所であってほしい。そう伝えたくて、屈んで彼女の唇にキスをした。




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