もし、出会っていなかったら。

もし、一緒にいなかったら。

もし、あなたじゃなかったら。



出会ってからずっと、ずっと、青峰だけを見てきた。楽しかったときも、辛かったときも、苦しかったときも、嬉しかったときも、ずっと。青峰といる時間はとても儚く感じて、零れ落ちる砂のように大事にした。安心したいのに、信頼したいのに、その儚さから不安が拭えなくて。ねえ、青峰はわたしのこと好き?愛してる?わたしが青峰を想うのと同じように、あなたはわたしのことを想っていてくれるの?ここまでずっと一緒。それが答えなんだろう。でも。IFの感情がわたしの中で消えては生まれて、生まれては消える。

もしも、彼じゃなかったら。青峰以外の誰かと恋愛してたら、今のわたしはどうなっていたんだろう。もっと色んな恋愛して、不安なんて抱えずにしあわせだったのだろうか。

一緒にいたら安心できるから。ずっとそばにいてほしい。だから早く帰ってきてよ。青峰からわかりやすい愛情を向けてもらえないことぐらい、付き合ったときからずっとわかっていたことだもの。形じゃなくていい、けど、そばにいて。

「早く帰ってきてよ、ばか」

繋がらない電話に短く留守電を残す。電話くらい出てよ、と理不尽な苛立ちをぶつけた。窓の外を見るとしんしんと雪が降っていた。きっとものすごく寒いのだろう。この部屋はこたつもあるし、ストーブもたいてるし、エアコンもつけてる。あったかいよ。それなのにわたしの心は酷く凍えてる。ねえ、帰ってきてよ、お願い。

「ただいま」

体がひやりとして、冷え切った何かに包まれる。同時に香る、青峰の匂い。冷たいのにとっても暖かくて泣きそうだった。ばか、遅いよ。もっとはやく帰ってきてよ。言いたいことはたくさんあるのにどれも言葉にならなかった。ただ小さく漏れる嗚咽だけが静かな部屋に、ストーブが轟々と燃える音と一緒に響いている。

「はやく寝ろ、つーかねんぞ」
「お風呂、入ってよ、」
「ンなもんあしたでいーだろ」
「…臭いよ」
「あぁ?!」

青峰は何も聞かないし、なにも言わない。どうせ言わなくたって気づいてる。そして、忘れた頃ににやにや言い出すんだ。そんなやつ。でも、それでいい。言葉遣いは荒いし乱暴だし短気だし、わかりやすい優しさなんて向けてくれないけど。本当はすごく優しいって知ってるから。だからいいの、そばにいてね




130108
♪寒いね。/スマイレージ



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