その日の夜、侑士から電話が来た。あったことを話すと、跡部にはうまく話しておくから、と言われた。お言葉に甘えてさっさと風呂に入って寝た。

次の日、いつものように朝練に間に合う時間に起きる。目の下には薄っすらと隈があった。なんとなく眠りが浅かった自覚はある。しかし学校に行かないわけにはいかない。今年は中学最後の年だ。レギュラーは序盤の大会には出ないものの、負けたらレギュラー落ちなのだからそれなりに気負って練習に取り組まなくてはならない。重い体を起こして学校へと向かった。部室の扉を開けると、着替え終わった跡部が目に入った。眉間に皺を寄せられたが特に何も言われず、それを察したのか誰からも昨日のことに突っ込まれることはなかった。ここに覚醒したジローがいたら、根掘り葉掘り聞こうとされたかもしれないが。



またネットだ。調子があがらない。体も重くてちっとも飛べない。周りの部員から視線を浴びているのを感じる。あーまじうぜぇ。たまには俺だってこんな日もあんだよ。


「おい、向日」
「……跡部」
「お前、しばらく来るな。片付かないとおいつまで立ってもそんな調子だろう」
「なっ…に言ってんだよ…」
「本当のことを確かめないで、何ウジウジしてやがる。ちゃんと聞いて、伝えるまで来なくていい。それだけだ」


侑士がどこまで話したのか、跡部がどこまで知っているのかはわからない。けれど、きっとインサイトで全部見抜かれているんだろう。反論したところで俺様の命令だ、なんて言われるのは目に見えている。ひとつため息をついて、わかったよ、とだけ返してコートを後にした。聞いて伝えて、か。玉砕覚悟で言えってのかよ。
まあウジウジしていてもしょうがない。馬鹿な俺だからはっきりとした結果が出るまできっとこうしたままだろう。なんとなく跡部に後押しされたんだなあとわかった。よし、放課後だ。言うだけ言う、それで満足だ。


「おはよう、佐藤さん!あのさ、今日の放課後時間ある?」







放課後、誰もいない教室。そこに俺と佐藤さんはいた。とりとめのない世間話をしつつ切り出そうかとタイミングを伺うが、なかなかいい出せない。宍戸に見られたら激ダサと言われるであろうちびりっぷりだ。


「佐藤さんはさ、昨日話してた人のこと、好きなんだろ?」


佐藤さんの頬が赤く染まった。これは夕焼けの赤みではない。そしてこくりと首を縦に振ることでそれは予想から事実へと変わった。


「迷惑なのはわかってるんだけどさ。……言わなきゃ先に進めねえんだ。聞いてくれるだけでいい。知ってくれているだけでいい。俺、佐藤さんのこと好きです」




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