なんか、


「お人形さんみたいだねぇ」


そうそう………………………って、


「いつからいたんだよジロー!」
「さっきからいたCー。すごいね、佐藤さん」
「…ジローも知ってるくらいすごいんだな」
「だってみんな言ってるから」


佐藤さんが転校してきて2日目、佐藤さんの周りにはずっと人だかりが絶えなかった。ジローのいうように、まるでフランス人形のような彼女。地毛だという少しオレンジがかったふわふわした髪に(女子達が話しているのを聞いた)、少し彫りの深い目鼻立ち(でも純日本人らしい)。大きなくりくりとした目は強い印象を残し、薄ピンクに色づく頬と唇は彼女の可憐さをより際立たせる。

と、ここまでいってまじまじと佐藤さんを見ていることに気づき何故か恥ずかしくなった。ここまで整った容姿はある意味罪だと思う。好きとか関係なく引き付けられるのだから。


「隣なんてラッキーだねー」
「まだあんま話してねえし」
「じゃあ俺が話しかけちゃおーっと!ねえねえ佐藤さん!」


は、と言う前にジローは隣の佐藤さんに声をかけた。クラスの女子と話していた佐藤さんがこっちを向く。

「俺芥川慈郎。よろしくねー」
「佐藤七瀬です。よろしくね、芥川くん」
「ジローでいいC!」


なんでジローはあんなにも気軽に話しかけることができるのだろう。佐藤さんに色めき立つ男子もそうだ。なぜあの大きな瞳と視線を交えて尚平然としていられるのか。そこらの女子とは全然違うのに。


「あ!俺向日に数学の教科書借りに来たんだった!」
「ジローが授業にちゃんと出るなんてめずらしいじゃん」
「この前あとべに怒られた…超怖かったC…」
「ああ…俺も言われた…」


そして俺がジローに教科書を渡すと、ジローは「じゃあまたね!七瀬ちゃん!」と言って教室を出て行った。俺はオマケか。つーかいつの間にか名前で呼んでるし!


「…なんかジローがごめんな」
「ううん、ジローくん面白い人だね」
「普段はいっつも寝てるんだぜあいつ!」
「へー!」


この後授業が始まるまで、佐藤さんとたわいもない話をした。ドクドクと高鳴る心臓の音に気づかれないようにしながら。でも、佐藤さんと少し仲良くなれたような気がする。


「あ、先生来た」
「…あぁぁぁあ!やべえ数学じゃん!」
「っそうだよ!」
「忘れてた…クソクソジローのやつ…」
「向日くん、教科書一緒に使おう」


ガタン。
佐藤さんが俺の机に自分の机を隣にくっつけた。やべえ、


「ごめん…ありがとう」
「ううん、いいよ」


近い。肩と肩が触れ合いそうなほどに近い。ちらりと隣に座り黒板のほうを見る佐藤さんを盗み見る。睫毛長い、な。横顔なのに、その美しさに引き付けられてならない。

結局、1時間心臓が高鳴ったままで授業をまともに受けることができなかった。クソクソジロー!





111021


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