「あー疲れたっ!」
今日から新学期。俺達は3年生になった。とはいっても、春休みは毎日部活で学校に来ていたので、久しぶりという感覚は全くない。しかもクラス替えはなし、イコール席も3学期まで座っていた場所と変わらない。しいてあげるならば教室が最上階になったというくらいで、なんら代わり映えしないのだ。
「よう岳人、久しぶりだなー」
「俺はほぼ毎日顔合わせてたけど」
「テニス部と野球部は忙しいからな」
久しぶりに会うクラスメイトと軽く挨拶を交わして机に突っ伏す。全く、新学期初日から気合い入れすぎだぜ。始業式の校長の話の時に寝ちまったら跡部のせいだからな!
今日は初日なので始業式とホームルームが終わればあとは掃除して午前中にさっさと帰れる。まあテニス部は午後からみっちり部活ではあるが。今のうちにしっかり体力温存しておかないと午後持たねーからなー、俺体力ねえし。そんなことを考えながら睡眠体制に入った。
始業式も終わり、教室に戻ってきた瞬間再び睡眠に戻る。初日というのはなぜか気疲れするものだ。こういう時後ろの席で、しかも隣の席がいないと睡眠の邪魔をされずに済む。喋るのが好きな俺にとっては普段は少し淋しく感じることもあるけれど。
「おーい、向日」
「……」
「向日起きろ!」
「…んぁ」
「お前聞いてなかっただろ、隣の席になるからよろしくな」
は?隣?え?
周りからクスクスと聞こえる笑い声を無視して前のほうを見ると、担任の隣には見慣れない制服を着た一人の女の子。
「転校生?」
「人の話を聞いてろ!」
「すいませーん」
黒板には佐藤七瀬と大きく名前が書いてある。なんか大人しそうな子だな。とりあえず隣の席に人が来るのは嬉しい。それにこの子なら俺の睡眠も邪魔しなさそうだし!
「それじゃあ佐藤、あの寝起きの向日の隣の席な」
「寝起きは余計!」
七瀬さんが俺の隣を通る。ふわっと香る、甘い匂い。
「よろしくな、俺向日岳人!」
「佐藤七瀬です。よろしくね、向日くん」
瞬間、顔が熱くなったような気がした。
これが俺と彼女の出会い。
111015