もう9月も半ばを過ぎた。去年は9月に入ったらいきなり寒くて、体育の水泳をブルブルと震えながらやっていたのが懐かしい。なのになんなんだ今年この暑さ。8月と変わらない日差しがジリジリ肌を焼き、この夏のせいで私の顔と手足はもう真っ黒。毎日朝だって日焼け止め塗ってるのに畜生。残暑、とかよくいうけど残りすぎじゃないのか。

「眠い、暑い、帰る」
「は?」
「じゃ、泉ばいばーい」
「お前っまじで帰んのかよ!」

隣の席の泉にそう宣言をして席を立つ。さっさと帰る準備しなきゃ。雑誌の付録でついてきた鞄に明日の授業で予習をしなくてはいけない教科のものを無造作にボンボンと投げ入れる……どうせ家帰っても寝ちゃってやらないような気がするけど。むしろそれしかない。

「ズリーぞ」
「野球部なんか絶対できないでしょ〜、羨ましいでしょ〜!帰ったらソッコークーラーつけて腹出して寝てやる」
「風邪でもひいちまえ」

ほんとに昨日腹痛くなったけどね……と、これは内緒にしておく。でもいいんだ、暑いからしょうがない!汗だくで帰って部屋ですっぽんぽんになってテレビ見たって誰も文句言わないもん。もちろん地球が温暖化しないようにクーラーは28度に設定してある。これ以上記憶が上がったら困る、暑さで死ぬよ私。

「午後の授業のノート、明日コピーさせてね」
「やるかよアホ」
「は、最悪なんだけど!」
「ちゃんと出りゃいいだろ」
「やだよ!いーじゃん今月まだ1回もサボってないもん!偉すぎるよ私!」

実際授業をよくエスケープする私が、今月まだ1回もサボっていないのは珍しいのだ。自分でも本当に偉いと思う、まあ1学期にサボりすぎて単位が危なくなったからというのが1番の理由であるが。

「もういいよ、別な子に借りるから」
「帰んのはやめないんだな」
「当たり前じゃん!2学期は暑いうちに休めるだけ休んどくことに決めたの」

どうせ寒くなったら外に出る気力もなくなってサボらなくなる、はず。多分教室のストーブの前で猫の様に丸くなっているだろう。

「じゃっ」
「…田島の字は汚くて読めねーよ」
「は?」
「三橋は話し掛けても目線が合わなくて会話からして無理だな」
「はまだ」
「浜田はいつも寝てる」
「……わ、私にだって女友達は…!………いなかった…」

考えて悲しくなった。男勝りな性格なせいで普段一緒にいるのは男が多い、気兼ねなくノートを借りれる女友達なんていなかったのだ。

「いい加減友達作れよな」
「うるせーやい…」

涙が出そうだ。私だって女友達欲しいもん。帰りにクレープとか食べて帰りたいもん。ケーキとか食べたいもん。

「…しょうがねえな」
「まさか!」
「1ページ100円な」
「泉鬼!」
「あ?」
「泉神!」

畜生泉の馬鹿野郎神様畜生!しかしこれで私は意気揚々と家に帰れるぞ!

「泉神ありがとう大好きチュッ」
「おまっ!」

お礼に愛のこもった投げキッスをプレゼントし私は教室をスキップしながら出た。途中何人かの先生に呼び止められたので走って逃げて上履きのまま学校を飛び出しチャリに乗り全速力。おかげでいつにも増して汗をかき、素っ裸でクーラーのガンガン効いた部屋で昼寝をした私は、次の日異常な腹痛にやられて学校を休んだのだった。





101006
合同企画唇から愛に提出


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