「京ちゃん」


何度呼んでも戻らない。それでも何度も何度も繰り返す。京ちゃん、京ちゃん。けれど彼は戻らない。だって、永遠の眠りについてしまったから。


「京ちゃん」


京ちゃん、私ね、変わったんだよ。京ちゃんがいなくなってから心にぽっかり穴が空いたの。それから胸の奥がズシンて沈んで重いんだ。いつもその重さに負けて、堪えられなくて、そこに座り込みたくなるの。そして涙が止まらないんだよ。ねえ京ちゃん。私の中では京ちゃんがいなくなった日から、京ちゃんが死んじゃった日から、時間が止まってるの。助けてよ京ちゃん。いつもみたいに綺麗な笑顔で、私の手を引いて。座り込んでる私を引っ張って抱きしめてよ。京ちゃん。京ちゃん。淋しいよ。




丁度1年前だった。京ちゃんが死んだのは。どうやったって信じられなくて、嘘だって、泣きわめいて。それでも彼が戻ってくることなんてなかった。ずっとずっと信じられなかった。でも、それも今日で終わり。

「京ちゃん、し、死んじゃった…けど、私、頑張るからね」

頑張るから。もう一度、心の中で念を押した。大丈夫、私は大丈夫だから。心配しないでね。
一筋の涙が零れた。初めて、初めて今ここで京ちゃんの死を認めた。心臓が止まったような、それともどんどんと早くなっているようなわけのわからない感覚の中、それでも私は笑った。一生懸命涙を堪えたけど、それでも涙は止まらなかったけど、笑った。


ねえ京ちゃん、見てる?もう平気だよ。だから安心してね。天国で私のことずーっと見ていてね。それから、京ちゃんのことはずーっとずっと忘れないよ。ずっとずっと、大好きだから。





100920
企画左目のキス様に提出

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