暑い。死にそう。

夏は暑いのが当たり前なのだろうが、毎年とてもじゃないが耐えられない。まだ朝9時だというのにジリジリと照り付ける太陽は、確実に私の体を焼いている。これで地球温暖化だなんだで更に気温が上がったらどうしてくれるんだ。みんなエコしろよ、とぶつくさ文句を垂れる私は家で毎日クーラーをガンガンつけている。

今年は特に暑い夏らしい。よりによって私が受験生の時に記録的猛暑にならなくたっていいじゃないか。家では様々な誘惑に負けてちっとも勉強ができない私は毎日自転車で20分かけて涼しい図書館に通っているのだが、これが苦痛ったらありゃしない。何しろ暑い暑い暑い。とにかく暑い。着いた頃には汗がダラダラで入念に塗ってきた日焼け止めなど何の意味も為さず持ってきたタオルは顔を拭いただけですぐびしょびしょになる。挙げ句カップルなんかを見つけたときには殺意を覚えるほどイライラする。

しかし、暑い。

とりあえず何とかして図書館に着いて自習室に入り勉強を始める。しかし昨日友達と遊んだせいで即爆睡。気がつくと既に2時間経過していた。そんな自分に嫌気がさしているとき、視線の先に1組のカップルが目に入った。うちのクラスのサッカー部の佐藤くんと隣のクラスの彼女さんだ。何だよ佐藤くん彼女いたのかよ。ちくしょう死んでしまえ。


「よっ」
「うわっ!…島崎か」
「おいあんまでかい声出すなよ」
「今のは島崎が悪い」

私が佐藤くんのカップルを睨んでいると、不意に後ろから背中を叩かれた。同じクラスの野球の島崎。あまりにも突然すぎて大きな声を出してしまった、静かな自習室で恥ずかしい。ちらりと周りから睨まれて島崎が自然な流れで私の隣に座る。

「何で隣来んの」
「今日混んでてここしか空いてねーの」
「じゃあ帰れ」
「何イライラしてんだよ。あれか、あの目の前のカップルか」
「うざ」
「しかしよくカップルで図書館なんて…色気ねーな」
「いいじゃん図書館デート」
「お前はアリなんだ」
「いや全然アリっしょ」

高校に入ってからテスト前は毎日図書館通いの私は図書館で勉強するカップルを何組も見てきた。そりゃあ憧れるだろう。こっちは一人寂しく弁当食べてるのにいちゃつきやがって。くそ、受験なんか失敗すりゃいいのに。

「じゃあアリだな」
「は?」
「お前がアリなら俺もアリで」
「ごめん言ってる意味が全くわかんないわ」
「俺がお前と毎日図書館デートしてやるよって話」

何、言ってんのこいつ。やだやだ絶対こいついろんな人にこういうの言ってきたんだ。

「余裕ぶっこいてんのも上から目線なのもうざい」
「…」
「でも別に図書館デートしてやってもいいよ」

ハッと島崎が鼻で笑った。こいつまじうざい。むかつく。だから私も鼻で笑ってやった。すると島崎は表情を変える。

「素直じゃねーの」

ああ暑い。これはきっとクーラーが壊れているに違いない。決して熱が上がってるとかそんなわけではない。だってむかつくでしょう?島崎にドキドキさせられるなんて。

「素直じゃないねえ、島崎は」

この会話が静かな自習室に響き渡っていたことは私達が一生知ることのない事実である。





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