「ねぇ」

隣で肩を寄せる晋助に、私は言った。

「なんだよ」
「もし私が死んでも晋助は死なないでね」
「あァ?」
「私が死んだから晋助も後追うとか無理。ダサい。キャラじゃない」
「ンなこたしねェよ」

私は前を向いたまま言った。隣は見なかった。晋助も、多分見ていない。ただ明るく闇を照らす満月を見る。それか今の私達にはまるで太陽のように眩しかった。

「そんで私が死んだら私のことは忘れて誰かいい人見つけなよ。黙ってれば結構かっこいいから多分イケるよ」
「オメェは俺にどうしてほしいんだ」
「まぁ普通に幸せになれたらいいなとか?天人殺してる時点で無理なのかもしんないけど」

ちらりと隣の晋助を見る。顔にべったりとついた血の跡が月の光に照らされて、なぜだかそれがとても綺麗だ。ふと、私は自分の手を見る。血に塗れていた。

「そうだろうな。こんなこたァしてちゃ俺らは幸せになんかなれねェ」
「しかも私達お国のために戦ってる訳じゃないし」

不意に体だが暖かくなる。私は晋助の腕の中にいた。同じ様にゆっくりと、晋助の背中に腕を回す。

「こんな戦、ほんとはどうでもいいんだよ」
「わかってる」
「ただ、俺はもうお前しかいねェ」
「知ってる」
「だから死ぬなんてもう言うんじゃねェ。お前が死ぬときは俺が死ぬときだ」
「私に晋助の後追えっていうの?うわっまじないんだけど」
「うっせー殺すぞ」
「さっきまで何言ってたのこの人。でもいいや、好き」
「お前以外の女だ?それこそ有り得ねェ」
「ふーん、ほんとは忘れないでほしいから忘れないでね」
「当たり前だろ。いなくなんじゃねェぞ」
「はいはい」


月明かりが地上を照らす。そして私達は、最後の戦場へと出た。



「生きててよね」

「死ぬなよ」


「「わかってる」」







100925
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