この手紙が届けられたのは戦が終わって何年もたった後のことだった。片時も忘れることなく彼のことを信じて待っていた私の所に知らされた彼の死に、私は驚くこともなかった。何となく、どこかでわかっていたから。随分久し振りに会ったヅラは何ともいえない表情で顔を伏せていた。そんなに、思い詰めなくてもいいのに。

ヅラによって渡されたこの手紙は、彼が陣を敷いた所に落ちていたそうだ。俺は必ず生きて帰ってくる、だからお前も生きて俺の帰りを待ってろ。そう言ったのはどこの誰なの?いつの間にかこんなに弱気になって。本当は、ずっと彼の傍にいたかったのに。彼と一緒に戦って、彼と共に散りたかった。そうさせてくれなかった彼のエゴ。愛しいと思う、けど私は。


ぽたりぽたり、と涙が零れ落ちて手紙に染みを作った。墨で書かれた彼の字が滲む。慌てて涙を拭うと、ふわりとヅラに抱き締められた。久し振りの人の温かさに胸がきつく締まる。



「…すまない」

「私も連れて行ってほしかった」

「大切だったんだ。守りたかったんだ。高杉も、俺達も」

「それでも私はみんなと一緒にいたかった」



すまない。
もう一度ヅラは謝った。そしてより一層ぎゅっと抱き締められる。
心のどこかでわかっていた。そうすることが正解だと。選んだのは紛れもなく私。本当に戦に出たかったならついていけばよかった。なのにそれをしなかったのは私。彼らが、晋助が私を守ることを望んだから。私が戦に出ることは望んでいなかったから。私が最後まで晋助の望む女でいたかったから。晋助の小さくても大事な夢を守りたかったから。

私が生きること。

そうすることが彼らの一番の望みだと知ってた。共に戦うのではなく、生きること。来るな、と言われたことを言い訳にして私は彼らの望み通りに生きた。本当はどちらがよかったのか。晋助の望み通り生きたことがよかったのか。戦に出ればよかったのか。あの時の選択に後悔はしていない。晋助が望んだことを叶えてあげられた、それはよかったけれど。でももし私が無理矢理にでも戦について行っていたら。何かが変わっていただろうか。


どちらにしても終わってしまったことでどうしようもない。私達は優しすぎた。それ故何もかもうまくいかなくて。もしも違う選択をしていたら、と後悔しても仕方のないことではあるが、やはり何度も何度その日のことばかり考えてしまうのであった。





100330
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