それは些細なことだ。すれ違い、よくある話。気がつけば形だけの恋人だった。長い付き合いの中で結婚だって意識してなかった訳じゃない。それなりに考えていたつもりだ。だけど、俺は浮気した。それはあいつを信じてたからだ。俺の戻るところには必ずあいつがいてくれるから。そう信じていた。だからお互いすれ違って、顔を合わせなくても何も気にしていなかった。そして、あいつが何が好きで何が嫌いかなんか忘れたとき。付き合った日、誕生日さえも忘れ、それに気づいたとき、酷く恐ろしくなった。怖い。これだけすれ違っていてあいつ、浮気してないか。自分は浮気するのに相手がするのは許せないというありがちな話がまさか自分に当てはまるなんて思いもしなかった。最後にセックスしたのはいつだったか。最後にキスをしたのはいつだったか。最後に手をつないだのは、愛の言葉を囁いたのは。思い出せない。怖くなって、まるで自分に暗示をかけるように愛をささやく。キスをする。セックスをする。彼女は一言も返してくれなかった。終わったのだ、何もかも。最後に言ったのはただ一言。





「遅いよ」





信じていたんだ。でも、ダメだった。彼女の髪からは違う男の匂いがしたから。




091104

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