倉持くんの恋人@

「絶対外出るんじゃねえぞ。じっとしてろよ」
「うん、いってらっしゃい」

小声で耳元で囁くと、倉持はこそばゆそうにわたしを床の上に置いた。扉を閉めるギリギリまで不安そうにこちらを見ながらそっとドアを閉めた。そんなに心配しなくても、もう1週間もこの部屋でこっそり共同生活しているというに。
こんな体になってしまってはかつては狭く感じたこの部屋も、まるでドームのように大きく感じる。今日は何しようかなあ。改めて部屋を探検してみるのも意外とおもしろいものだ。ベッドの下は初日ですぐにやめたけど。何というか、見たくないものまで見てしまった。それにしても窓から溢れる太陽の光が眩しい。毎日よく寝ているけど、小さな体で色々と動き回るのは随分と疲れる。今日はちょっとのんびりしよう、そう決めて脱ぎ捨ててあったジャージにくるまってみた。暖かい。段々と瞼が重くなって、視界がぼやける。そしてわたしは目を閉じた。



「え、え!?何だよこれ!!」

突然大きな声が聞こえて危うく飛ぶんじゃないかと思った。聞こえるというか、最早全身が声の圧に飛ばされるような、そんな感じ。当たり前のように目を開けたそこには、しゃがんでわたしをまじまじと見つめる沢村くんがいた。

「え、嘘。今何時?」
「先輩?先輩!?ちっちゃ!」
「そうなの。なんか知らないけどちっちゃくなっちゃってね、実は1週間ここに住んでました」
「まじスか!?うおー、ちっちぇえ!全然気がつかなかった!」

沢村くんが乗りますか、と手を差し伸べてくれたのでその手のひらによじ登った。順応早いな。倉持が小さくなったわたしを見た時はもっと慌てふためいていたのに。

「ご飯とかどうしてたんスか」
「倉持が持ってきてくれてたのちょっと食べてたよ」
「あ!だから倉持先輩パン持って帰ってきてたんだ!」
「そうだったの?なんか悪いことしちゃったなあ」

あまりにも沢村くんの順応が早いもんだから、頭乗せて、なんていってアトラクションのような気分を味わってみた。沢村くんも面白くなったのか、グルグル回ったりジャンプしたりして一緒に遊んでくれた。ゲラゲラと沢村くんの笑い声が頭を伝って響いてくるが、それは何とも言えない心地よさだった。

「おい沢村うっせーぞ!外まで聞こえて…おい何してんだ!!」

だからわたしと沢村くんは倉持が入ってきたことに気がつかなかったのだ。

「あ!倉持先輩!なんスかこれ!言ってくださいよ!」
「うっせー!返せ!」
「ちょっと!これじゃないし物でもない!!」




140305





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