CLAP THANKS




木枯らしがぴゅうぴゅうと吹きつける、そんな季節に。

君たちと、出逢った。



僕たちの恋愛戦争 vol.1




今夜は寒いから湯豆腐にでもしようかな。

お鍋が美味しい季節になったし、何より簡単なのに美味しいからね。
豆腐はこの前特売してた時に買ったのがいっぱいあるし…うん、決まり。

湯豆腐採用!


思い立ったら即行動するのが私のモットー。

野菜や豆腐の準備をしている間に鍋でスープを煮立たせる。

そしていよいよ具材を投入!…した時だった。



…ガタ、

ん?

…ガタガタガタ

あれ?

お風呂場からなんか変な音がした気がするんですけど。
んー、勘違い「ボコォォォォン!」じゃなかったらしいよ!何この音!
まさかガス爆発!?
や、困るそれ困る!ここに住めなくなったら私ホームレス高校生になっちゃうんだから!!

顔を真っ青にしてバタバタとバスルームまで走り、勢い良くバンっとドア開けると。

そこには不自然なほどの白い煙が立ち込めていた。

え、待って、さっきの冗談のつもりだったんだけど。
まさか本当に爆発だったりする?

なんてこったい…。勘弁しておくれ。



「…っけほ、なんだこれ、」

摩訶不思議な現象に茫然としていると、突然煙の中から人の声がした。
しかも男の人の。え、実は不法侵入者!?

「誰だ」

何かひゅんっと音がしたと思ったら、次の瞬間には首に何か冷たいものが当たっていた。

おいおい、ナニゴト。

混乱していたら背後からもう一度聞こえてきた「誰だ」の声。
いやあんたこそ誰だよ!そう突っ込みたかったけど今はそういう雰囲気じゃない気がする。空気は読める子なんです、私。

そんな現実逃避もむなしく、首に当てられた刃物から解放される気配はない。

殺、される。

流れる空気が冷たく感じた。







どうしようコレ。どうするよ。

17年生きてきてまさか自分がこんな目に会う日が来るとは夢にも思わなかった、ははは。…って、笑ってる場合じゃないって。いやぁもうほんと…


ぷしゃー、ぷしゃーっ!!


「ぷしゃ?…ああああ!お鍋っ!!」
「!?」

ドンっと背後の人物を両手で突き飛ばして私はキッチンへと駆けた。


今思えばあんな状況で火事の心配する私は馬鹿以外の何者でもない。

しかし幸運なことに、そんな私の行動が予想外だったのか、背後の人物は間抜けな声を出して私を解放してくれた。



「…ああ、良かった」

すんでのところでガスを止めた私はほっと一息吐いてから、気配を感じてそろっと後ろを振り向く。

そうして目をみひらいた。

私から2、3歩離れたところに居たのは――私の知る限りでは――"忍者"だった。

うん、忍者。よくアニメや漫画なんかに出てくる、装束を纏ったシノビってやつ。見たところ私とそう年齢も変わらない。

これは一体どんな状況で、私はどんなリアクションを取ればいいのだろうかと思っていたら、慌てて風呂場からここまで私を追いかけてきたはずの彼もぽかんと私を見ている。

…え、どゆこと?コスプレ?




沈黙、沈黙、沈黙。

隣のリビングから漏れるテレビの雑音が、どこか遠くに聞こえる。

私たちはしばらく見つめあったまま微動だにしなかった。

いや、というか目線を逸らすタイミング完全に逃した…!なんかどちらからも逸らせないといった感じで心底困っている。


なにかきっかけが欲しい。この際なんでもいいから!


そんな私の願いが通じたのか図ったように彼のお腹がきゅるると鳴った。

ほうほう、お腹がすいているのか。



「あ…、えーと。とりあえず、食べる?」



何故そういう考えに行きついたのか私にも分からない。

本当ならここであんた誰よと問い詰めるべきなんだろうけど、空腹の少年を見過ごすわけにもいかない。

現金なことに、私は物騒なものを突き付けられていたことも忘れて、彼を晩餐に誘った。

いや、まずは空腹を満たしてから話を聞いてもいいじゃないか。


ほわほわと湯気を放つ鍋を指さして言えば、黒髪美人(そう、彼はなんと美少年だった)の彼はものすごい勢いで首を振った。もちろん縦に。

っていうか鍋の中見た瞬間瞳がきらっきら輝いた気がするんだけど。さっきまで私を殺そうとしていた人とは思えない。



でも、なんだ。案外可愛いところ、有るじゃないか。







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