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アマガミパロ

昨日、大山に額にキスをされた。不意打ちだった。俺はあれからその時のことが頭から離れない。でも隣にいる大山は普段と変わらず、俺ばかり振り回されているようだった。大山にキスをされた額を触る。その指は今度は唇をなぞる。次は唇にキスしてほしい、と思った。

「なあ、またキスしてくれよ」
「え…」

大山は驚いたような顔をして、それから微笑んだ。

「今度は藤巻くんからしてほしいな」
「いいのか?」

俺からキスをする段階まで進んでいないと思っていた俺は大山を見つめる。

「したくないの?」
「いや、してぇけどよ」
「でもここじゃ嫌だよ。誰にも邪魔されない所がいいかな」






誰にも邪魔されない所。俺が一番最初に思いつくのは、体育館倉庫。ここなら誰も来ないだろうが、埃が舞っていてキスをするには到底相応しくない場所だ。俺だって嫌だが、大山が言うならしょうがない。

「本当にいいのかよ」
「うん」

大山に近づく。大山の唇にキスをするのは初めてで、俺は柄にもなくドキドキしていた。

「でも唇はだめだよ」

足が止まる。唇にキスは駄目?

「じゃあどこにしろっていうんだよ」
「普通じゃ面白くないから、藤巻くんだからこそっていうか…思いつかないような所ならいいよ」
「そんなこと言われてもよ…」
「早くしてくれないと気分変わっちゃうよ?」

思いつかないような所…?おれは宙を見て考える。自分がするくらいなんだから、額は大山にとっては思いつかないような所ではないんだろう。顔は誰でも思いつく。あとは首、鎖骨。はしてみたいが普通だ。他には…。

「肘の裏とかか」
「肘の裏…?」

大山は目を丸くして俺を見つめる。アホなことを口走ってしまった。いくら他に思いつく所は全てありきたりで却下されるような気がしたとしても、肘の裏なんて恥ずかしすぎる。第一大山に変に思われるのは困る。俺は肘の裏フェチなんかじゃない。さっきのはなしだ、と訂正しよう。しかし大山はなぜか頷いていた。

「肘の裏か…いいよ」

いいのかよ。肘の裏なんて思わず言ってしまった俺もアホだが、それを許可する大山もなかなかだろう。それを口に出しては絶対に言わない。大山が乗り気なら俺から拒む理由はなかった。
このままじゃできないよねと言って大山はシャツをたくし上げる。段々と露わになっていく大山の肌に唾を飲む。大山ってこんなに肌白かったのか。肘の少し上まで上げた所で、大山は俺の前に腕を突き出した。

「…なんか恥ずかしいね」
「今更いやだつってもおせーぞ」
「言わないけど、」

いざ目の前にすると少し躊躇してしまう。大山の肘の裏にキスをしている自分を想像してみるとたまらなくかっこ悪くねぇか…?死んでいるといっても、人生の汚点になるレベルだ。

「は…早く」
「お、おう」

大山に急かされて目が覚める。これは次へ進むためのステップだ。恥ずかしさを頭から振り払い、ゆっくりと大山の肘の裏に口付ける。

「んっ…」

大山の声に驚く。そんな声出すなよ…。やばい。止まらなくなりそうだった。俺はもう一度肘の裏にキスをする。

「あっ…くすぐったい…」

大山は体を震わせる。そんないい反応をしてくれるのに止められるはずがなかった。別に回数については何も言われていなかったからいいだろうと、調子に乗って舐めるようにキスをする。

「あ…ふ、藤巻くん!」

こんな状況で名前を呼ばれるのはこちらとしては願ったり叶ったりだ。しかし俺には返事をしている余裕はない。

「いっ、いつまでしてるのかなあ!」

大山は腕を引こうと後ずさる。しかしちゃっかりと腰に回されていた腕のせいで、大山は俺から逃れられない。離す訳にはいかない。俺は大山の言葉なんて気にせず何度も口付ける。

「これ以上は本当に駄目だよ!」
「いてっ」

大山は開いている方の手で俺を殴った。しかもグーで。俺はしぶしぶ手を離す。

「おい、さっきのはかなり痛かったぜ」
「だってそうでもしないと…」

俺の腕に注がれる視線に気づいたのか、大山はシャツを下ろす。

「藤巻くんって急に強引になるよね」
「そうかもしれねぇな…」

自分からキスは出来ないと遠慮していたほどなのに、こんなことは出来てしまう自分がよくわからない。ただ、シャツで隠れてしまった大山の肘の裏がやけに気になるようになってしまったことだけはわかった。





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