俺は昔から欲しいものが多すぎた。一度紙に欲しいものを全て書いてみると、自分でも呆れるほどだった。幼かった俺には全てを買えるようなお金はなく、どうにかいらないものを削ろうとした。頑張って削っても欲しいものはまだまだ多かったんだけど。ただ、泣く泣く諦めたものは、買えたものより欲しくなったりする。買った後にあっちを買えばよかったと何度も後悔したことがある。まあ、どちらを買ったとしても俺はそう思ったんじゃないだろうか。
そんな具合に俺は幼い頃から物欲が激しかった。それは中学に入ってからも治らなくて、どんどん俺には欲しいものが溜まっていく一方だった。



そんなときだった。綱海さんを好きになったのは。綱海さんは好きだということを伝えても、いつもはぐらかして、ちゃんと返事をしてくれない人だった。からかうなだとか、若気の至りだとか。そんなだから、俺はずっと綱海さんに片思いをしている。



俺は最近欲しいと思うものがなくなったんだ。だって、俺が今一番欲しいのは綱海さんの心だから。今紙に欲しいものを書いてみたら、『綱海さんの心』とだけ書いて俺は他に思いつかないと思う。前にはすごく欲しくて、あれこれして手に入れようとしたものも、それが何だったのか今はもうよく思い出せない。
何もいらないから、綱海さんの心が少しだけほしい。それは俺が今までで一番ほしいもので、一番手に入れるのが難しいものだ。あの時に泣く泣く諦めた、何かのようには絶対にしたくない。