稲妻11 | ナノ

僕は友達A

染岡くんに彼女ができたって聞いて、僕はそんなに動揺しなかった。不思議だ。あんなに好きだったのに。僕は自然に染岡くんのことを諦めることができてたみたいだ。彼女さんと一緒にいる幸せそうな染岡くんを見て、僕も満足だって、そういうことなのかな。僕は思ったより強いのかもしれない。



「吹雪、染岡知らないか?」
「豪炎寺くん…」

なんで皆僕に聞くんだろう。別にいつも一緒にいるわけじゃないのに。特に染岡くんに彼女ができてからは。

「…知らないよ、あんな人」

あんな人だなんて、なんでそんなこと言うんだよ、そう思っても自分の口が勝手に動くのは止められなかった。
僕はいつの間にかいつもの僕からは考えられないくらい、饒舌になっていた。口から出るのは全て染岡くんのこと。思ってもないような、悪いこと。

「おい、やめろ」

そう言われるまで、僕は染岡くんのことをずっと豪炎寺くんにぶつけていた。

「ごめん、」

豪炎寺くんは僕がなんで染岡くんを悪く言うのかわかってるんだろう。だからそれ以上何も言わない。僕を責めてるんだ。やめてくれ。僕に染岡くんのことを聞くのも全部。もう、僕は染岡くんのことを諦めてるんだ。諦めようとしてるんだ。



僕は皆に染岡くんのことを悪く言っていた。だって皆が僕に染岡くんのことを聞くから。つらいんだ。僕はもう染岡くんのことを考えたくない。



ずっと、自分を誤魔化してた。本当は染岡くんを諦めることはできてなかった。だから僕は必死に染岡くんを諦めようとした。
染岡くんに彼女ができたって聞いたときに、そんなに心が痛まなかったのは本当だ。そんな暇がなかった。友達に彼女ができたのを喜ぶ、染岡くんのよい友達としての僕を上手く演じないといけなかったから。助かった、と思った。皆がいなかったら僕はその場にうずくまっていただろうから。でもそんな無理は続かない。一人になったらどんなに自分が惨めで、滑稽なのかわかってしまった。だから、それをまた誤魔化すため、染岡くんを好きだったことを隠すため、少しでも染岡くんのことを嫌いになるため、染岡くんのことを悪く言った。すごく心が痛かった。自分でもすごく悪いことをしてるってわかってる。でもやめられない。だってやめたら自分がどれだけ惨めで、滑稽なのかを思い出してしまうから。



僕はやっぱりまだ染岡くんのことが大好きみたいだ。あきらめきれなくて、ずっと心が苦しくて、でもそれを認めたくなくて、誤魔化そうとした。染岡くんのことを嫌いになろうと努力もした。でも無理だ。もっと僕は染岡くんのことが好きになってる。



あの頃、二人で一緒にいるのが一番楽しかった頃、一瞬だけでも染岡くんは僕のことを好きになってくれてたと思った。なのに思いを伝えなかった僕は馬鹿だ。あの頃に僕はもう一度戻りたい。





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