綱海さんは自分から俺に歩み寄ってはくれないんだろうな。というか、シャイだからできないでいる、やり方がわからないでいるんじゃないかな。っていうのは、だったら可愛いなっていう俺の妄想。本当の所、綱海さんは何にも考えてないように見える。
「綱海さん」
「なんだ」
「手、繋いでもいいですか」
綱海さんはちゃんとわかってるんだろうか。俺がなんで綱海さんと手を繋ぎたいと言うのか。綱海さんにはそういうことをちゃんと考えてわかってほしい。
「手?」
綱海さんは自分の手を見つめて、閉じたり開いたり。何を考えているんだろう。横顔からは何もわからなかった。あんまり考えてなかったけど、断られたらどうしよう。俺は立ち直れないと思う。
「あのさ、」
手を見つめていた綱海さんの目は、今度は俺に向けられた。ドキッとした。綱海さんは真剣な目をしていたから。そんな瞳で断られたら俺は…。
「手を繋ぎたいのはお前が俺のことを好きだから?」
少し言いにくそうに、綱海さんは俺に聞いた。断りの言葉が出てくると思っていた俺は、少し拍子抜けをしてから、言葉の意味をゆっくり考えた。そして今度は俺が綱海さんの目を見る。
「そうです」
うれしかった。ちゃんと綱海さんは考えてくれたんだ。俺が言った言葉のこと。
「俺が綱海さんのこと大好きだから繋ぎたいんです」
そんなことまで聞いてねーよと言いながら綱海さんは俺から目を逸らした。それも俺にはうれしいことだった。俺のことを意識してくれてるってことだから。俺は少し強引に綱海さんの手をとった。