稲妻11 | ナノ

ボコデレ綱海さん


「てめぇ!」

綱海さんは照れ隠しなのか知らないけれど俺をよく殴る。本気で嫌がっているとは思えない。それは綱海さんの表情からと少しの俺の希望から。

「痛いです。綱海さん…」

元々は俺の急にキスしようとしたり、抱きしめようとしたりといった行動のせいなんだけどこれが結構痛い。でも俺はにやにやしながら殴られているものだから、痛いと言っても綱海さんは本気にしていなかった。
綱海さんはいつも顔を赤くして、それが俺は好きだった。子供っぽいと言われても好きな子ほどいじめたいという気持ちは本当によくわかる。といっても俺には綱海さんをいじめるなんてできなくて、からかい止まりだった。






綱海さんの後ろ姿を見つけると、抱きしめたいという衝動にかられる。殴られるとわかっていても。

「綱海さん!」

綱海さんに抱きつき綱海さんの髪に顔をうずめる瞬間。綱海さんの匂いに包まれる瞬間。それが一瞬だけでも、殴られても俺は構わない。

「お前はまた!」

綱海さんの拳は俺の横腹にクリティカルヒットする。綱海さんは俺を殴っているうちに段々と腕を上げているようにみえる。今回はかなり手応えがあったんじゃないだろうか。痛かった。俺は横腹を押さえる。綱海さんはまだ殴り足りないようで拳はグーのままだった。

「ちょっと待って。本当に痛いんですよ、」

俺がそう言うと綱海さんの振り上げた拳はゆっくりと降ろされた。まだ殴られると思っていた俺は、綱海さんの顔を見る。

「悪い…」

綱海さんはばつの悪そうな、困ったようなそんな顔をしていた。

「え…」

俺は一瞬綱海さんが何故謝っているのか、何故そんな顔をしているのかわからなくて呆けたような声を出してしまう。そんな俺に綱海さんは近づき、俺が横腹を押さえてる手に自分の手を重ねた。

「今まで痛かったか?」

そんなにしおらしくされると調子が狂う。綱海さんはもっと溌剌としていて、いつも笑顔で、俺と二人きりの時だけ少し弱さを見せる。そんな綱海さんが好きだ。弱さと言ったってそれは俺のせいであってはならない。俺が関係していることで、悲しませたり、泣かせたりはしたくなかった。だから俺は少し嘘をついた。

「いや、そうでもないです」

下手な嘘だ。俺はつくづく嘘をつくのが向いていない。やっぱり俺の嘘は通じなくて、綱海さんはまだ不安げな顔をしている。

「だから、もっと殴ってもらって大丈夫です」

馬鹿なことを言ってると自分でも思う。俺はただ綱海さんにそんなに表情をしてほしくないだけだ。

「なに言ってんだ」

やっと綱海さんは少し微笑んだ。そうだ。綱海さんははにかみやでもあった。





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