「隣、いいですか?」
ベンチに座っている綱海さんに声をかける。綱海さんは俺を見てああ、と言った。俺は綱海さんの隣に腰掛ける。今日はいい天気だ。雲一つない青空。少しかっこつけてみるといい天気すぎて不安になるほどにいい天気だ。こういう日は海に出かけてサーフィンしたいなんて綱海さんは言いそうだと思っていたら、案の定綱海さんはサーフィンやりたいと呟いた。俺は綱海さんとこうやってベンチに並んでいられたら別にいい。それに綱海さんが何故か持っている花がいい香りを漂わせていて、俺にとっては幸せな昼下がりだ。
「最近海行ってねーなあ」
「あ、そうだ。今度一緒に行きませんか?」
俺は今思いついたように、綱海さんを海に誘う。前々から考えていたことだった。なかなか言い出せなかったけど。
「おっいいぜ」
綱海さんは俺に笑いかけた。俺の好きな笑顔。
「サーフィン教えて下さい」
俺も笑顔で笑いかける。綱海さんが頷くと、ふわりと花のいい香りがした。
「いい香りのする花ですね。なんで花なんか…」
「え?これ折り紙だぜ?」
綱海さんはきょとんといった表現がぴったりな表情で花を差し出す。いや、俺が花だと思っていたものだ。それはよく見ると折り紙できた花だった。
「えっ…でも、」
この香りは、と言おうとするとまた花の香りがした。そうか。綱海さんから花の香りがしているんだ。綱海さんは何故こうも俺の心をくすぐるんだろう。
「綱海さああんっ」
「うぉっ」
俺は思わず綱海さんに抱きついていた。引き剥がされるかと思っていたら、綱海さんはそうしない。俺は大きく息を吸い込む。綱海さんは花のいい香りがした。