稲妻11 | ナノ

言い訳

俺は頼られるのは好きだ。昔から綱海くんは面倒見がいいねなんて先生からは言われてきたし。別に損なんて思わない、頼られて嬉しい。困っているやつを見たらほっとけない。道徳的に聞こえるかもしれないが、それは偽善でもなくて俺がしたいから。中には助けてほしくないなんてひねくれ者がいたかもしれない。でも俺はそんなの知らない。
しかし、そんな俺にだって例外というものがある。それは俺を好きなやつだ。小学校の頃に俺のことが好きな女の子がいた。俺はそれを知ってからその子のことがどうも苦手になって、関わらないようになってしまった。どうやって接すればいいのかわからなかった。今考えるとその子には悪いことをしたと思う。
こんなことを長々と説明しているのは今また同じような状況にいるからだ。立向居が俺のことを好きだなんて言うんだ。しかもそれだけじゃなく立向居は男だ。
俺は知った。人と関わる機会が多ければ恋愛とは縁を切れないって。俺に恋愛はまだ早いんだ。恋だとか愛だとかそういう輪の中に自分がいるのがたまらなく恥ずかしい。人にあの子は綱海のことが好きらしいと言われるのが嫌だ。好かれていることを他人に知られるのが嫌だ。

今日は円堂が「綱海と立向居は一緒に練習な!」なんていつもの何も知らない純真無垢な笑顔で言いやがるから、こいつとは嫌だと言えなかった。それに下手に嫌だと拒否して何か感づかれても困る。円堂が何か知っていたらいたで俺は死んでしまうけどな。立向居が俺のことを好きなことは絶対に知られたくない。円堂や他のみんなにこのことを知られるのは俺がなんとしてでも阻止する。



「二人きりですね」

立向居はニコニコという文字をつけられるような笑顔だった。俺には嫌な笑顔に見える。ついこの前みたいな関係に戻りたいなんて叶わない願いなんだろうか。俺は溜め息をついた。

「そうだな」
「俺、迷惑になってますか?」
「いや、」

好かれていることを迷惑だとは思わない。けど。

「俺はお前に好かれてるってことを知られるのが嫌なんだよな」
「なんでですか」

なんでと聞かれても、本当の所どうして嫌なのか、恥ずかしいのかわからない。恋愛なんて誰でもしていて日常の中に溢れていることなのになんで。もちろん今回に限り男だからって言うのはあるが。

「俺は皆に言いたいです。俺の好きな人は綱海さんですって」
「それだけは止めろ」

考えただけでも恥ずかしい。立向居は不満そうな顔をするがそんなの当たり前だろ。

「綱海さんの好きな人は俺だって言えるようになれたらいいと思います」

そう言う立向居はあの楽しかった頃の笑顔で、思わず俺も微笑み返しそうになってしまった。その笑顔で綱海さん!とか言いながら駆け寄ってくればいいんだ。もちろん俺達の間に恋とか愛だとかそういうものはなしだ。でもその笑顔を全否定するようで可哀想な気がするから今のところは、と言っといてやろうか。




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