稲妻11 | ナノ

好きだ、

今日は吹雪の誕生日だった。俺はかなり前からプレゼントをどうしようか悩んでいたが、今現在全く決まっていない。当日にしてこんな状態であるのは、かなり切羽詰まってるんじゃないか。いや、これにしようかというものはあった。が、本当にこんなものでいいのかと思って結局買えていない。どうでもいいやつへのプレゼントはすぐ決まるのに、大切にしてるやつぼど悩んで決まらない。そういうセオリーを憎らしいくらい俺は履修していた。好きなやつへのプレゼントをどうしようという時は、大体好きなものとか趣味から考え始めるだろう。しかし、俺は吹雪の好きなものや趣味をあまり知らなかった。聞こうと思っても誕生日が近づいてるのにそんなことを聞いたらプレゼントのことだとバレバレだろう。そういうのは気恥ずかしくてできなかった。当日まで悩むなんて思ってなかったからそんな悠長なことを言ってられたんだが。吹雪はあんまりそういうこと自分から言うやつじゃないしな。俺だけが悪いんじゃないよな。そう自分に言い聞かせてみるがそんなことを考えてもプレゼントのアイデアは降っても湧いてもこない。今さらもっとあいつのことを知る努力をするべきだったと後悔する。俺はあいつのことが好きなんだから。俺は知りたいさ。でもあいつにはどこまで踏み込んでいっていいのかわからないんだ。あいつにも色々思う所があるだろうから。

俺達の関係を世間一般ではなんて言うんだろうな。付き合ってるのか?と聞かれても俺はイエスとは言えない。ちゃんと告白をした記憶もされた記憶もない。だからといって友達とは俺が言いたくないし、客観的に見ても友達だとは言えないだろう。よく言う友達以上恋人未満っていう不安定な関係なのだろうか。それって付き合ってるのかわからない、終わりは決まって自然消滅ってやつじゃないのか。
少し話がそれたが、恋人だったらもっと吹雪のことを深く知れる気がするってことだ。誕生日のプレゼントもこんなに悩むことはなかったんじゃないかと思う。下手なものを渡したくない。諦めて、本人に欲しいものを直接聞いてみようか。趣味を聞くよりもずっと駄目なんじゃないかと思う。でも誕生日を過ぎてプレゼントを渡して、誕生日を忘れてたのかなんて思われるのは一番嫌なことだった。






「誕生日、おめでとう」
「え…ありがとう」

吹雪は意外そうな顔をして、礼を言う。こいつ俺が誕生日覚えてないと思ってたのか。俺だって好きなやつの誕生日くらいちゃんと覚えてる。

「なにか欲しいものあるか」

ここで吹雪が何でもいいよ、なんて答えたらふりだしに戻るわけだ。どうでもいいが俺はそう答えるやつが嫌いだ。相手のことを考えてそうで一番考えてない。一番答えになってないと思う。でも、誕生日何がほしいか聞くやつも俺は嫌いだった。それは今まで俺が聞くことがなかったからだ。

「あのさ、」

吹雪は俺の顔色を疑うようにチラチラと視線をよこす。お前の誕生日なんだから俺に気を使うなよ。

「ちゃんと、告白してよ」

無言。俺はこんなことを言われるなんて思わなかったから、返す言葉がなかなか見つからない。

「…そんなんでいいのか」

これは照れ隠しだ。俺だって吹雪に告白してと言われて、直ぐにクソまじめに告白なんてできない。少し心の準備が必要だ。

「じゃあ、」

俺は少し宙を見てから、何度も聞いたことがある台詞を吹雪に言った。芸のない、詩的でもない言葉だ。他の言葉が思いつかなかったんじゃなくて、俺はそれが一番簡潔できれいな言葉だと思ってるから。飾られた難解な言葉は苦手だった。それに俺が吹雪に言ったってことだけで、俺にとっても吹雪にとっても特別だろ。

吹雪は照れながら、俺に笑いかけた。そして頷く。吹雪の笑顔は俺が今までみた中で一番の笑顔だと思った。




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