稲妻11 | ナノ

豪華客船に乗って

「豪華客船に乗って旅行してみたいですね。二人で」

俺は呟いた。

「そうだな」

綱海さんは、そう呟く。綱海さんはなんだか上の空で、ちゃんと話を聞いているのか俺にはよくわからない。俺達は少しの間無言の時を過ごす。そして思い出したように、綱海さんは口を開いた。

「なんで船なんだ」
「え?」
「なんで船に乗るんだ。旅行したいんだったら、飛行機でいいんじゃねえの」
「そんな…」
「中身が目当て何だったら別に高級ホテルとかでもよくねぇか」

そう言われると元も子もない。綱海さんにはデリカシーがどうとかっていう話はしないでおこう。俺は少し考えてから、綱海さんに聞いてみた。

「船の上でプロポーズされたら、受けたくなりませんか?」

俺は綱海さんの目を見つめて、逸らさない。でも、綱海さんの方はすぐに目を逸らす。

「男の、俺に聞くなよ」

ぽつりと綱海さんは言った。男、ね。綱海さんの頬は赤くなっている。綱海さんは今の俺の質問に答えられるはずだ。俺が見つめながら聞いたことで、赤くなるんだから。俺のこと、本当は意識してるんでしょ?また、俺は綱海さんに逃げられたように思う。

「まぁ俺には豪華客船なんて似合わないってことだな」

綱海さんはそう言うと、この話を終わらせた。つまらない。



俺は飛行機で旅行するよりも、高級ホテルに泊まるよりも、船に乗って旅行する方がずっといいんだ。俺がなんで綱海さんと船に乗って旅をしたいのか。船の上からは逃げられないから。どこにも。そんな中で俺のことが嫌いになったら、海に飛び込みますか?いくら綱海さんだからって、どこの国の領海なのか、陸からどれくらいの距離なのかわからない海に置いていかれたら死んでしまう。嫌いな俺と一緒にいるか、死ぬかっていう究極の選択。絶対に死なせたりはしないけど。
俺達は船の上にいる間はずっと一緒だ。今の綱海さんは俺と向き合わなくても、逃げられる。でもそれができないようになるんだ。気付かないフリもさせないし、本当に気付いてないのなら無理やり気付かせてやる。だから、俺だけを見て、ずっと俺だけといる綱海さんがそこでは手に入るような気がするんだ。
そこで俺はプロポーズをする。また俺のプロポーズを受けるか、海に飛び込むかっていう二択。断らせたりなんてしない。

それは綱海さんには言えないこと。俺がこんなこと考えてるのには、綱海さんは一生気付かなくていい。






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