檸檬




リョーガがアメリカに行く?
そんなの初めて聞いたよ。
何だよ、それ。




「あ、深紅…」

『ハヨス、謙也』

「深紅、何も聞いてへんの」

『何をだ』

「リョーガのこと」

『は?』




リョーガのこと?さっぱり、
わからん。




「…やっぱり、言わんかって
んな」

『だから、何がだよ』

「リョーガ、今日あっち行く
んやで」

『……ハ?』




何だよ、それ。アイツが、
リョーガが今日アメリカに行く?




『白石!オサムちゃんには
うまく言っとけ!』

「おー」




あのバカヤロ。一言ぐらい声
かけろよ。何も言わずに行く
とかふざけんな!




『リョーガのクセにカッコ
つけんじゃねぇよ!』




駅まで俺は全力で走った。
間に合ってくれと願いながら。
駅でアイツを探してみる。
だが、俺が駅に着いた時、
電車はもう出た後だった。




『クソったれ…ッ』




何も言わずに、勝手にどっか
行くんじゃねぇよ!




『馬鹿リョーガ…ッ!』

「ひでぇ、言われようじゃね?」

『!』




目の前には。




「よっ!」

『リョーガ…』

「何、そんな泣きそうな顔
してんだよ」

『バカ野郎、誰が』




違う、言いたいのはこんなん
じゃない。




『リョーガ、俺待ってるよ』

「え?」

『お前が帰ってくるの待ってる』

「…じゃあ、あん時言わなかった
お前の好きな奴。諦めろよ?」

『それは、無理』




何でだよ!って、キレられる前に
言ってやる。




『お前だから』

「!」

『それでも、諦めろと?』

「…八王子、それ反則」

『何が…ッ!』




俺が反論しようとした時、
リョーガによって塞がれた。
口の中には甘酸っぱい味が
広がる。




『お前…ッ!』

「やるよ、俺のファーストキス」

『ハ?』

「お前のは俺が貰った」

『…バッカじゃねぇの』




そのまま電車に乗ると思った、
が。




「ファーストキスはレモン味、
ってな」




何かを投げたと同時に電車の
ドアが閉まった。




『レモンキャンディ…』




(キザ野郎)

[ 9/10 ]


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