言われずとも 

「…何で」

『あ?』

「助けて!燐ちゃん!
仁王君がウチに!」

『…いい加減に本性現し
たらどうだ、結花。仁王は
自分から女子に手は出さ
ねぇよ』

「!」

『お前だろ?ここ、荒らしたの』




低い声で凄んでみる。俺
だって久しぶりにこんな
声を出したよ。それほど、
キテるってことだ。あの
仁王も目を見開いている。




『答えろ、結花』

「アンタさえ…」

『…』

「…アンタさえいなければ」

『…』

「アンタさえいなければ
ウチが壊れることも
なかったんや!」




結花は人が変わったように話し出した。




「せやで、ウチが前のも
けしかけたんや。アンタ
なんか死ねばえぇって
思た。アンタから、何も
かも奪ったろ思た」




やっぱり、コイツが全ての引き金だったんだ。ここで起きたこと全て、コイツが黒幕だったのか…。




「アンタの家族も酷い
やんか…。アンタ1人
残して死ぬやなんて…。
アンタも連れてってくれ
れば良かったんに…ッ!」

「おい!」

「アンタの近くにおる
仁王君も奪ったろって
思た…。アンタの周りに
人がおらんクなれば
良かったんに」




…仁王も俺から奪うだと?俺の全てを奪ったお前
がか…。俺のこと、よく
知りもしないお前がかッ!




「1人でおればえぇねん…」

「お前、えぇ加減に…」




パン…!




ユウの言葉を遮るように
乾いた音が響く。俺が
結花の頬を平手で打った
からだ。




「燐!」

「何すんねん」




結花は打たれたことに
驚いたのか、尻餅をついて
いた。だが、俺は倒れた
結花を立たせロッカーを
後ろに押さえ込んだ。




「「!」」

『…お前に何がわかる』

「い…ッ!」

『お前なんかに残された
俺や仁王の何がわかるってんだ!あ゛ぁッ!』

「燐…」

『傷を残しておいて今更
なんだ!消えねぇデカい
ヤツ残しておいて、お前に
俺の何がわかる!何も知ら
ねぇくせに、知ったような
口叩くんじゃねぇ!』

「知らんよ!アンタなんかのことなんて知らん!
居場所なんてどこにもない
ねん!ここにも!大阪
にも!…ウチの前から
消えてよ」




今の台詞に一気に記憶が
フラッシュバックした。
…んなこと、わかって
いるさ。




『…テメーに言われずともなぁ。んな事自分でも
解ってんだよ、クソアマが』

「「!」」

「燐!そこまでや!」

『…俺の前から消えろ、今すぐ』




結花ともう1人は走って
どこかに消えた。ユウに
止められなかったら、
間違いなく結花をぶん
殴っていただろう。白石
達の方を見るとみんな
苦虫を噛んだような顔
だった。特にユウと白石。
周は光の足にしがみついて
今にも泣き出しそうだ。
幸村達はムスッとして
いた。何故かは解らない
が。とりあえず、頭を
冷やしてこよう。




『蔵ノ介、精市。俺、頭
冷やしてくる』



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