濡れ衣 

朝、コートに着くと物凄い
形相で俺達の方に歩いて
くる燐に幸村が
気付いて挨拶をしていた。



『これ、お前のか』




差し出された手のひらにはゴムが1つ。




「お!俺んじゃ!」




次に燐の口から出た
言葉に俺達は驚いた。




『部室を荒らしたか…』

「「ハ?」」




俺のゴムが部室に落ちて
いたというのを燐から
言われた。部室を荒らした
かとも聞かれた。その時の
燐の目が嘘だろ?と
俺を射ぬいていた。それ
ぐらい鋭い目だったから、俺は説明が出来なかった。それに、燐に信じて
貰えなかったというのが
あまりにもショックで。




「…仁王君」

「柳生〜…」

「すみません、私のせいで」

「…仕方なかよ、説明
できんかった俺も俺じゃ」

「仁王くーん!」




…来やがった。多分、
今回の件の原因であろう
人物。コイツばかりは
やっぱり無理だ。どこか
胡散臭い。俺が言っても
説得力はないだろうが。




「…何じゃ」

「堪忍なぁ、ゴム落としてもうてん…」

「ゴムって…、これん事
か?」




そう言ってゴムを差し出すと、案の定目を見開いた。これは、ビンゴかもしれ
ない。




「これ…」

「燐が届けてくれたんじゃ」

「…そうなんや」




結花とか言う奴はあから
さまに顔を歪めた。




「…お前さん、何が目的
じゃ」

「…燐ちゃんの全てを
奪うこと」

「「!」」




俺と柳生は顔を見合わせた。




「ウチの全てを奪った
ように」

「逆恨みか」

「ちゃう!」




違うなら何だと言うんだ。意味が解らない。特に、
こういう奴が。




「人を信じれんくなれば
えぇんよ、あの子」




…コイツ、ここまで性格が歪んでいるとはな。流石の俺も思わなかった。




「だから、こんなこと
したんか」

「せやで」




文句あるかと言うような
顔でこちらを見る。文句
ありありだ。ない訳が
ない。




「どうせ仁王君も相手に
されてへんのやろ、好き
やのに」

「!」

「自分から動けん弱い
アンタがあんな子と一緒に
おって何になるん?あの子
には何もないんよ?自分
しかいらんて言うたのよ?
あの子よりウチとおった
方がえぇと思うけど?」

「…燐かお前さんかを
選ぶんじゃったら俺は
迷わず燐を選ぶ。
歪んどるお前さんより
燐の方がえぇ」

「な…ッ」

「行くぞ、柳生」




俺と柳生はアイツを残して
その場から去った。
…むしゃくしゃする。
アイツの言ったことに腹が
立つ。図星なのだ。
アイツに言われたこと
全て。自分じゃ何もでき
ない。愛がなければ生きて
いけない。だから、俺は
彼女との行為で愛を得る。
だが、燐は俺の望む
ものをくれない。…俺は
いったいどうしたらいい。



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