嘘だと言ってくれ 

次の日の朝、それは突然
起こった。まさかの
出来事が起きていた。
ユウと一緒にテニス
コートに向かい、部室の
ドアを開けたら室内は
惨状と化していた。




『何やこれ…』

「空き巣か?」

『いやいやいや』

「おはようさん、早いな」

『白石、これ…』

「ん?どれ…、って何や
これ…」




何故か、部室の中が荒ら
されていた。部室には鍵が
かかっていた筈なのに、
誰がどうやって部室の中に
入ったんだ。…いや、
待てよ?




「いったい、誰が…」

『…入れる奴が1人おる』

「え…?」

『…結花』




そうだ、結花なら中に
入れるだろう。オサム
ちゃんから鍵を借りれば。
アイツは元テニス部
マネージャーだから。
…ん?




『…これ』

「ヘアゴム?」




何で、こんな所にヘア
ゴムが落ちてるんだ?
コイツ等の中にヘアゴムを
使う程長い髪を持ってる
奴はいない。それにして
も、このヘアゴムどこかで
見た事あるぞ。僕の周りで
紫のヘアゴムを着けていた
奴は…。




『…仁王』

「ん?燐、何か言うた?」

『あ、いや。なぁ、立海の
奴等は?』

「そろそろ来るんやない
かしら?」

「来たで」




謙也がそう言ったと同時に
僕は歩き出していた。
しっかりとゴムを握り
しめて。この目で確かめ
たいことがある。違って
いて欲しいと心で願い
ながら。




「あ、斉木。おはよう」




幸村が僕に気がついた。




『おはよう』




問題の人物を探す。髪型が変わっていないで欲しいと願いながら。




「燐〜…、おはよ〜」

『おはよう、にお…』




う、と言う前に僕の口から声が消えた。仁王の髪型を見て。




『ない…』

「何が?」

『尻尾が…、ない…』




尻尾というのは仁王が髪を結ぶと尻尾みたいなちょろ毛ができるから、僕はそう呼んでいる。だが、今日はそれがなかった。結われてなかったのだ。まさか、
仁王が…。




『ゴム、どうした…』

「なくなった」




平然と答える仁王に僕は
驚いた。慌てるかと思ったから。




『…これ、お前のか』




差し出す手のひらにはあのゴム。




「お!俺んじゃ!」




…決まってしまった。僕は嘘だと言って欲しかった。



『仁王、部室を荒らしたか…』

「「ハ?」」

『部室の中にそのゴムが
落ちていた。部室には鍵が
かかっていたのに、中が
荒らされていた。その中に
これがあったんだ』

「「!」」

『白石達はこれを知らない』

「燐、それは…」

『あとで理由を説明して
くれ。練習が終ってから
でも』




僕は、そういうと部室へと戻った。その時の仁王の
顔が酷く悲しそうな顔を
していたのを僕は知る由もなかったのだ。



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