中学の時 

「「…」」

何だ、この小さいの。
さっきから、燐と
馴れ馴れしくして。小さい
からって容赦しないぞ。




「おい、銀髪」




生意気だな、コイツ。昔の
赤也みたいだ。




「仁王じゃ、チビ。さっき教えたったろうが」

「チビちゃうわ!周や!」



…ホントにコイツ、財前の甥っ子か?全然似てない
だろ。




「おい、にお」

「…何じゃ」




返事をして、周とかいう
奴の方を見るとしゃがめと
いう仕草をした。俺も
目線を合わす為にしゃがみ
こむ。すると、さっき
までの威勢の良さと元気が
嘘のようにしょぼくれた。
何だ、このギャップは。




「…におは燐ちゃんが
笑わんようになったん
知っとる?」

「理由は知らんが知っとる」

「俺もよく知らんけど、
さっきの姉ちゃんが
カンケーしとるんやって」



ひーくんが言うてた!
とか、言ってたが誰だ。
ひーくんて…、財前か。
周が言うさっきの姉ちゃん
ってのは、燐が結花
って呼んでた女のことだよ
な。確かに、アイツは俺も
苦手だ。見ててイライラ
した。




「にお、燐ちゃんを
助けたってな」

「…何で、俺に頼むんじゃ」

「せやって、燐ちゃん。
におと一緒におった方が
普通なんやもん」




普通ねぇ。四天宝寺の
奴等を見てどこかホッと
しているのは見てて解る。
俺達と普通に話してるのも
見てるから解る。しかし、
あの女が出てきた時の
燐の表情はどこか
ぎこちなかった。




「周、燐に何があったか
話してくれんか」

「…俺もちっこかったからよく解らんねん。せや
けど、あん時燐ちゃん
泣いとってん」




燐が、泣いた?あの
燐が?俺は思わず
耳を疑ってしまった。




「周、燐さんが探し
とったぞ」

「あ、ひーくん。ホンマに?」

「はよ、行ったれ」

「おん!」




俺と財前を残して周は
燐のもとへ走って
いった。さっきのしょん
ぼりとは裏腹に元気よく。




「…仁王さん」

「ん?」

「燐さんのこと、教え
たげます」

「何を」

「燐に起こった中3の
時の黒歴史と言う名の
大事件」




黒歴史であり大事件…。
そこまでのものがあるのか。




「燐さん、全国が終った
辺りから過激なファンに
嫌がらせみたいなんやられ
てたんスわ。しかも、質
悪ぅて集団リンチやら強姦
紛いのもんまでされた事
あるんスわ。全部未遂です
けど」

「!」




何だって?あの燐が?




「笑わんようになったんも
そのせいッスわ」

「…何で、俺に教えたん
じゃ?」

「仁王さんも燐さんと
同じ匂いがしたからッスよ」




天才の名は伊達じゃない
と。まさか、人間観察も
得意だとは思わなかった。
そして、普段の俺が精神
的に弱いと言ってるような
あの目。その通りだから
否定はしないが。




「とにかく、水瀬結花には気ィつけてください」




そう言って財前はコート
へと戻っていった。俺は
一人、ただ立ち尽くして
いた。自分の心の弱さを
実感しながら。


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