部長登場 

次の日、仁王はいつも通り
学校に来た。いつもより
スッキリしたような表情で。




「…燐」

『何だ』

「昨日はありがと…」




仁王は、申し訳なさそうに
少し頭を下げた。顔を
あげた時、少し赤かった
から恥ずかしかったの
だろう。可愛い所もある
じゃないか。その時、
教室の外が一段と騒がしく
なった。女子の黄色い声で。




「仁王はいるかい?」

『…なるほど』




アイツは確か、テニス部
部長の…。




「幸村、何じゃ」

「倒れたんだって?」

「ゆ、幸村ッ!?」

「やぁ、ブタ。仁王の事
見とけって言ったよね?」




…流石部長。威厳が半端
じゃないな。まぁ、副
部長も結構凄いが。とり
あえず、その黒い笑顔引っ込めて欲しいものだ。
ブン太が怯えて僕の後ろに
いるし、仁王も顔がひき
つっている。それにしても…。




『ブタ、なぁ』

「うっせ!燐!」

「あれ?斉木さん?いたの?」

『今更か?まぁ、久しぶりだな。幸村』

「苦労をかけているよう
だね、うちの部員が」




そんなの今に始まったこと
じゃないから、もう諦めて
いる。だから、幸村には
乾いた笑みを送る。




「燐、幸村の事知っとるん?」

『まぁな』

「え、斉木さんって仁王の
彼女?」

『違う』

「違うの?」

「そうじゃ、俺フラれとる
から」




仁王がそう言うと、幸村も
ブン太も目を見開いた。
嘘だろというような目で
僕を見る。そんな目で
見られるようなことを僕は
何かしたかな?




「…斉木さん、ホント?」

『ホントだ』

「もったいねー!」

『お前は最低だな、ブン太』




まぁ、仁王はイケメン
だからもったいないと思う
かもしれないが、生憎僕は
そう思わないんだ。




「仁王の事フる子って
いるんだね」

『おい、幸村。僕をその
辺のミーハー共と同じに
するな』

「そうだね、その辺の
俺達なら誰にでも股開く
ような女共と一緒にして
ゴメン」




そこまでは言ってはいない
が、その通りなので僕も
反対はしなかった。




「斉木さん」

『斉木でいい』

「じゃあ、斉木。これ
からも仁王を頼む」

『あぁ』

「仁王も朝練に出ろ。
それが嫌なら辞めて
貰っても構わない」

「幸村!」

「…ピヨ」

「お大事にね」




幸村がここに来たっていう
ことは、仁王の様子を見に
来たってのと自覚を持て
って圧をかけに来たって
いう所だろうと思っていた
が、その通りだとは。
仁王も少し息を吐いて
いたし。だが、これだけは
解った。仁王はまだ、
テニスが好きだという
こと。多分、戻りたいん
だろう。前の仁王に、前の
自分に。僕も少し手助けを
してやろうか。


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