卒業 〜3月@〜

あ〜…。来ちまったか…。
早かったなぁ…。明日、
俺は大阪を出る。生まれ
故郷の大阪を出る。その
前に、今日ここを巣立つ。
でも、本当は…。




ここにいたい。
アイツらと…、白石と
いたい。




「何ボーッと突っ立ってん
ねん」

『謙也…』

「行くたい」

『千歳…』

「ホラホラ

『小春…』

「アホ面になっとんで」

『一氏…』

「大丈夫や」

『師範…』

「しっかりしぃ、旭会長」

『白石…』




そうだ…。俺達、みんな。
ここを卒業するんだ。




『せやなぁ。景吾とは
いとこやけど、景吾とは
全然ちゃうんやでって言う
所見せたらな』

「「おん…!」」

『笑って…、卒業や!!』
「「おん!!」」




せや、笑ってここを出な。
卒業式は順調に進み、
残すは答辞だけ。




「答辞。卒業生代表、
跡部旭」

『はい』




俺は、ステージに立つ。
こことも、今日でお別れ
や。おおきにな。




『答辞。俺は、何処の
奴等も同じだと思ってた。
生徒も、親も先生も、
ダチでさえも…。俺が
跡部家の人間だという
だけで、媚ばっか売って
きた。だが、ここは
違った。ある奴が言って
くれた。俺は俺だから
仲良くなった、と。
それだけだったけど、
俺にはスゲー嬉しかった』



あ…ヤベ…。涙が…。




『あ〜…。らしくねぇ…。
泣けてきた…。俺がなぁ、
泣けッかよ…』




笑うっつったばっかだ
っての…。




『その言葉のお陰で、俺は今ここにいる。学校も、
生徒会も部活も…。スゲー楽しかった。めんどくせぇって思ったけど、今では
いい思い出だと思ってる。
テニス部の奴等には、
支えられてたな。
ありがとう。最後…』




ニッと笑った。景吾に
そっくりだよなぁ。
こういう所だけ。




『泣きてぇ奴ァ泣け!
喚きたきゃ喚き散らせ!
笑って見送れ。笑って
ここを出ていきやがれ!
今、俺が言える事はそれ
だけだ。ダチを大切に
しろ。仲間を思え。解った
だろうなぁ。アーン?
以上、西の女帝』

「「認めたッ!?」」

『最後だからだ』




そう、最後だから…。
だ〜ッ!!




『何で!!』

「「記念や!」」




俺は今、プリ機の中。
卒業祝やと。




「はよぉ!」

「おまかせでえぇッスよね?」




金ちゃんも財前もいる。




「1枚目やな」

「『ハイ、ピース!』」




パシャ。




何で揃うんだ!?




「2枚目〜」

「『勝ったもん勝ちや!!』」




……。だから、何で
揃うんだよ!!
何て、
思ってると撮影終了。
落書きは、財前と小春と
一氏に任せた。




「ハイ、旭ちゃん



何や、そのニコニコ…。
って、ん?




『……』

「えぇやろ?」




否、コレは…。




「旭〜!何固まってん
ね…ん…」




白石も固まった。




『「コレ…」』




俺と白石の周りだけ、
ハートで囲われてた。
下に、お似合いと言う字
まで書いてある。絶対
小春やろ…。




「『小春〜ッ!!』」




俺と白石は、顔を真っ赤に
して叫んだ。




「あは

『あはじゃねぇ!!』




逃げんな!コルァ!
つか、小春…。お前、
意外に足速いやんか!
いつの間にか、海に来とるしよォ!




『何でや!』

「がむしゃらに走っとった
からやろ!」




ゥオッ!一氏にツッコ
まれた。




……


…………



………………




『…嫌だ』

「「え?」」

『ここから出てくのは…、嫌だ…』

「旭?」




嫌だ、離れるなんて嫌だ。
コイツらが暖か過ぎんのが
いけねぇんだ…。




「旭…」

『謙也、自分で言うから』




そんな顔すんなよ…。




『…悪ィ、一緒の学校
行けなくなった』

「「え…」」




固まるよな、そりゃあ。




『親権が、景吾ん家に
行ったからな。氷帝学園に
行かなきゃなんねぇんだよ』

「…しゃあない事、
…なんスよね」




財前…。




『あぁ、景吾が頭下げて
くれたんだがな。無理
だった』

「いつや…」

『え?』




白石が聞く。いつもより、
真剣な顔で。




『…明日』

「「明日ァ!?」」

『見送りには来んな!』

「でも…ッ!」

『小春!』




俺の顔は、どんなだった
だろう。泣きそうか?
辛そうか?



帰り道。




白石といつものように、
背中合わせで帰った。
いつもとちがかった事は、一言も話さなかった事。


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テーマ「人外ファンタジー」
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