初雪 〜12月〜

『う〜…、さっぶ』

「ホンマや〜、って俺
もっと寒いんやけど」




そりゃ、自転車漕いどればな〜。白石のお陰でそんな
寒くない。




『風避け…』

「さらりと酷い事言うたな」

『ホンマの事や〜…。あ、
謙也と財前』




後ろ向きに乗っている
から、通り過ぎても
気づいた。




『ハヨス〜…』

「おぅ」

「ハヨざいます…。旭
先輩、ずるいッスわ」




財前、寒そうやな。ただで
さえ、体温低いんにな。
体温と言えば…。




『…白石』

「…何や?」

『なんか、熱ない?』

「否、普通やで?」




んな訳ない…。熱い…。




『ホンマ、大丈夫か?』

「大丈夫やって!」




いやいや、テンションが
おかしいだろ。




「白石、顔赤ない?」




お!謙也!いつの間に!?



『謙也もそう思うか?』

「部長、どないしたん
スか?」

「大丈夫やって…」

「『!?』」




何で泣きそうになんねん!
泣きそう?まさか!




『ヤバい!!』

「「何が(や/スか)?」」




白石が泣きそうな時は…。




『保健室!行くで!!』

「「おん」」




2人は、訳が解ってへん。



『財前!体温計』

「ハイ」

『白石〜、挟んで!』




白石は、無言で体温を
計る。人の肩に、寄り
かかって。ちゅーか、
久しぶりかもしれへん。




「大丈夫やろか?」

『無理やろな。38度
あったらヤバイ』




ピピッピピッ




『ハイ、見せ』




やっぱり無言。




『どれ…』




白石の体温を見て、俺は
絶句した。




『お前、何で学校来たん?』

「な…ッ!39度て!」

「謙也さん、うっさい
ッスわ」




ダメや。帰らせよ。でも、
帰らせても玄関先で
倒れるんが関の山やな。




『ホレ、早退や。家に
おばさんおる?』




ふるふると首を横に降る。
何やろ、こんな時に不謹慎
やけど。




『かわえぇなぁ…』

「「え゙!?」」



『しゃあねぇなぁ、俺も
早退するから謙也。オサムちゃんに言うとけ!』

「え!あ、おん」




さて、自転車持ってきて。
俺が、漕いで帰るんか
ま、しゃーないけど。




『お邪魔しま〜す』




誰も、いーひんけど。




『ホレ、足元に気ィつけ』



真っ赤な顔でコクッと
頷く。ちっちゃい子みたいやな。




『ホレ、着替え』




あ、タオル。体、拭かな。




『ちょォ、待ってろな』




ガシッ。




『!?』

「…おってや」




何やコイツ!?
ホンマに、あの白石か!?
手首掴んだで!?コイツ!?
パニクってんのに、出る
言葉は。




『俺はおるで?』




何とまぁ、冷静。




「…何処にも行かんと
いてや」




この…ッ!?捨て犬
みたいな目で俺を見る
なァッ!!何て言う心の
叫びは白石には聞こえては
いない。ハァと俺はため
息を吐く。




『風呂場まで歩けるか?』




コクッと小さく頷くのを
見逃さなかった。あー、
かわえぇ。




『ホレ、服脱ぎ』




しかし、白石はコテンと
倒れてる。




『…チッ。ホレ、
バンザーイ!!




一気に服脱がす。そして、
ぬるま湯で背中を拭いて
やる。




『…いつの間にデカ
なったんやろなぁ』




ふと、出た言葉。




『前は、俺の方が背も
デカかったんにな』




さっさと着替えさせて、
布団に寝かす。あ、そだ。
お粥作ってやろう。




白石side
朝から、なんかダルい…。学校に来る途中、旭
にはバレた。保健室で体温
計ったら案の定、熱が
あった訳で…。そっから、
記憶があんま無い。目ェ
覚ますと目の前に見えん
のは、見慣れた天井。




「…あ、俺の部屋?」




いつの間に、帰ってきた
んや?否、まだ学校か?
否、ガブリエルおるし
俺ん家や。あの鞄は、
謙也?謙也でも、来とん
のか?オカンがおる訳あらへんし。




ガチャ。




「!」

『あ、目ェ覚めたんか?』

「旭…?」




何でおんのや?




『白石〜、あんな熱出とんのに、学校来るかぁ?』




休め!旭は、言いよるが
俺は…。




「否、旭に会いた
かってん…」

『俺?』




あ、何言うとんのやろ。
俺…、熱でイカれとる…。




『ホンマに?』

「おん…」

『おおきに』




旭が笑う。この笑顔
見たさに今学校に行っとる
ようなもんや。




『アホ!!』

「!?」




アホて…。




『アホやろ!お前!電話の
一本でもよこしい!学校
休んででも、看病しに
行ったるわ!!』




あ、嬉しい…。




「おおきに…」




あ、顔赤い…。期待して
えぇんかな…。
白石side終了




学校に来た理由を聞いて
呆れた…。そんな理由で
学校来んな!あ、でも
嬉しいんやで?これでも、な。




『ホレ、お粥作ったから
食べや』

「おん…」




まだ、起きるとふらふら
しとるな。




『白石』

「何や…旭…」

『口、開け 』

「ぁ〜…」

『ホレ』

「!?」




俺は、白石の口にお粥を
突っ込む。モグモグと口を
動かす姿は、可愛くて、
どこか懐かしかった。




『美味いか…?』

「おん…、美味い…」

『良かった…』




ホッと、胸を撫で下ろす。




『ぅあ、さっぶ…』

「机ん所…、ブランケットあるで…」

『借りてえぇの?』

「えぇよ」




じゃ、お言葉に甘えて…。
あ、暖か。




『ったく、保健委員が熱
出してぶっ倒れるとか。
アホちゃうん?』

「ハハッ、ホンマやな」





ホンマに、反省しとんのか?




『風邪引くと、俺に泣き
ついて、甘えたになんの
今だ健在やったとは…』

「俺…、泣いたん?」




お、顔真っ赤。




『正しくは、泣きそう
やった』

「恥死する…」

『可愛かったで?』

「止めてや…」




弄るのも、ここまでに
するか。ふと、窓の外を
見ると白い綿のような
ものがふわりと漂っていた。




『白石!』

「何や…、旭…」

『窓の外!』

「外?」

『寒いハズやわぁ。雪
降っとる』

「ホンマや」




ゥオッ! 起きとる!
つか、ふらふらしとるやん。




『初雪や』

「せやなぁ…」

『ホロホロと…』

「キレイやなぁ…」

『儚く…散りゆく…白い
花弁は…まるで…自分の
心を…現しているようだ…』

「え?」

『思い出した詩』

「切ないな…」




何故、この詩を思い出したのかは解らない。だが、
この詩がこれからの俺を
現しているように感じる
のは気のせいやろか。




オマケ
「「白石ーッ!」」

「鍵開いとりますよ…」




ガチャ。




『静にせんかーッ!!』




俺の飛び蹴りを財前が
避けたから、後ろの謙也に
ヒットした。




「アガッ!」

「旭先輩」

『白石、寝とるっちゅー
ねん!』

「「ホンマや…」」

『今日くらい、素の白石で
いさせたいやん』

「せやねぇ…」

「オトンみたいやな」




ピクッ!




『んやと…?一氏ッ!!

「あ!スマン!間違うた!」

『許すか!オドレェ!』


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