全国大会 〜8月A〜

ついに来た。




『全国…』




足、動かねぇ。俺らしくも
ねぇ。




「何、震えとんねん」

『白石…』




本当に俺らしくない。
久しぶりすぎてビビって
んのか…。




『少しだけ、怖ぇ…』

「俺かて怖いわ。でも、
大丈夫や。気にせんで
えぇ」

『おん』




白石に言われて、少し
落ち着いた。




『よっしゃ、行くで!!』

「「おおッ!!」」




周りには四天宝寺テニス
部の輩。




「「ドンドンドドドン
四天宝寺!」」




大丈夫だ。アイツらなら
やってくれる。




『青学レギュラーか…。
手塚、不二、乾、菊丸、
大石、河村、桃城、海堂、
そして越前』




やっぱ、震えやがる。
クソッ!俺らしくねぇ…。
もしかして、マジで怯えてんのか?俺は…。信じ
きれてないのか…?
アイツらを…。




『初戦は、白石やな』

「旭、皆に1言言って
くれへん?」

『俺が?特に、何もして
へんぞ!?』

「俺らと、一緒にいた
旭やからや」




白石の顔は何時にも増して真剣だった。




『俺で…えぇのか…』

「頼む」

「俺からも」

「俺もッスわ」

「「(ウチ/俺)らも」」

「ワイも!!」

「ワシからも」




あまり、期待した目で
見ないでほしい。何を
言えばいいかわかんねぇ
だろうが…。




『…じゃあ、いくつか』

「「1言やないんかいッ!!」」

『それが俺やろうが』




ニッと意地悪く笑う。皆も
つられて笑う。あの、
財前でさえも。




『1つ、悔いは残すんじゃ
ねぇ』

「あぁ」

『2つ、楽しんでこい』

「おん」

『3つ、暴れてこい』

「うぃ」

『4つ、笑かしてこい』

「「おん!」」

『5つ、怪我はすんな。
なるべく』

「ゥム」

『最後…』




俺は、3年メンバーを
見回した。




『笑って締め括れ。
勝っても負けても…な』

「「っしゃあ!!」」




存分に暴れてきやがれ。
俺は、お前らを信じる
だけだ。試合は勢いで、
白石は不二のファイナル
カウンターに苦戦しつつも勝利した。だが、それからだ。お笑いテニスの
2人が、負けた。




「笑うたわ!」

『お疲れさん、ゆっくり
休みィ』




次の、財前と謙也。
しかし、謙也の代わりに
千歳が出た。謙也もやる
時ゃやるんやな。




「ハイレベルやなぁ」

『才気煥発と百練自得の
対決なぁ…』




しかし、勝利したのは
百練自得の極みだった。




『お疲れさんな、千歳』

「おん…」




次の銀の試合。




『見てられん…』




相手が痛々しい…。銀も
辛いやろうけど…。




「あの人、青学のお荷物
ッスよね」




財前がボソリと呟く。




「財前!」




ムギッ。


俺は、白石が何か言う前に
財前の頬をつねった。




「いひゃいッス…」

『そんな事言った口は
この口か』





手に力を入れる。




「いひゃいッスっへば!
ひぇんはい!」

『次言ったら今の3倍だ』
「ハイ…」




痛い…、見てて痛い…。
目を背けたい…。でも
そんな訳にはいかん…。




「あれ!銀が無効化できてへん!」

『!?』




銀の様子がおかしい…。
まさか…!


『…オサムちゃん、
棄権や』

「ん?」

『銀、折れとる…』

「そら、アカン…。審判!」




オサムちゃんが、銀に
近寄り何か話してから
1言。




「この試合、棄権します」



そこで、青学の勝利が
確定し、俺ら四天宝寺の
敗退が確定した。
金ちゃんは、どうしても
試合がしたかったらしい。
だから、一球勝負をする
事になった。




「ハイレベルやなぁ」

『まだまだやけどな』




俺の言葉に、周りは
驚いた。




『あの2人は、まだ強く
なる。絶対』

「ま、旭が言うんや
から間違いあらへんな」




何て言ってるうちに勝負はついた。ボールが2つに
割れて、それぞれの
コートに落ちた。




「引き分けやな」

『嘘…』




ありえない…。




「旭?どないした?」

『俺の他にコイツを…
使えかけとる奴がいる
なんて…』




驚きと好奇心と興奮とで、ドキドキしている。




『使いこなせ…、越前
リョーマ。天衣無縫を』




俺と、手合わせできる
その日まで…。




「?」




バスに戻ってもアイツらは
何故か、笑ってた。




「#nameちゃん!堪忍
なぁ…、勝てへんくて…」

『気にしなや…、楽しんだやろ?』

「「おん…」」




返事には元気がなかった。




『…そんな、悔しいなら。
泣け』

「「!?」」




俺の顔は、多分何時もと
ちげぇんだろうなぁ。




『景吾は、お前らと違って
ウジウジしてやがった。

テメーは、俺のいとこか!
って、怒鳴ってきた。
でも、お前ら辛ぇからって
笑ってりゃいいってもん
じゃねえよ』




言ってること、矛盾してる
な、俺。




『今のお前らは誰だ?
壊れたロボットみたいに
同じ言葉繰り返してんの
か?ちげーだろ』




白石達は無言だった。




『泣きたきゃ泣け!喚き
たきゃ喚け!明日、笑える
ように。今だけは、
スッキリするまで泣け…、な』




そういって、俺は白石の
隣に座った。




「お疲れさん。旭」

『俺は何もしてへん…』

「肩貸すから、泣き?」

『普通、胸やないんか。
そして、泣かへん…』

「ほな、旭の頬を
伝っとるのは何や?」

『ハ?』




知らないうちに泣いてた。




『けっ…。キザ…』

「旭にだけや」




俺は、白石の肩に身体を
預けて泣いた。涙が枯れ
そうになるほど泣いた。
そして、この夏。青学が、
全国優勝を決め、俺らの
熱くなった夏は終わった。


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