お前らしくない 〜8月@〜

「今日、氷帝と青学の
試合の日やな」

『…せやな』

「不安か?」

『白石、そんなんちゃうわ』

「やったら、何やの?」

『景吾の事やから、自慢
しにくんねんやろな思て』



ガクッ。
白石はコケた。白石に
言うたんは、嘘や。景吾は
自信家やから、負けた時の
落ち込みを他人に見せよう
とせぇへんから。俺に
すら、見せようとせぇへん
から不安や。




『ま、ええわ。練習、
始めやーッ!!』

「「いきなりかいッ!!」」

『それが俺やろ』




そういって、ニッと笑うて
やる。大丈夫や、景吾は
昔とちゃう。だが、俺の
期待は簡単に崩れた。
しばらくして、俺の携帯が
鳴った。相手は、侑士
やった。




『もしもし』

「俺や、侑士や」

『知っとるわ。結果、
どうやったん?』

「…負けてもうた」




やけに大きくハッキリ
聞こえた。だからこそ、
耳を疑った。




『ホ…ンマに…』

「景ちゃんも、負けた…」

『…ハ?』

「それも、1年に」




青学の1年レギュラー
言うたら…。




『越前か…』

「あぁ…」




となると、不安なんは…。



『景吾の様子は、どや?』

「部屋から出てこーへん」



やっぱな…。




『…侑士』

「あ?」

『…執事でもメイドでも
えぇ。ヘリ寄越せ、
言うてや。俺が言うとった
言えばえぇ』

「おん」




侑士は短く返事をしてから
電話を切った。俺は白石の
方を向いた。




『白いs「行ってきぃ」




白石、わかっとったんや。



『おおきに』




ジャージを羽織って、
屋上へ向かって走った。




白石side
「行かせてよかったん?」




俺は声のした方を向いた。




「小春…」

「好きなんやろ?」




何でもお見通しなんやな。




「…今はえぇねん。それに
跡部の事よぉ知っとんのは
旭や」




だから、少し悲しそうな
顔しとった。アイツの事
だから、跡部の気持ちを
考えたんやろな。




「…蔵リン、健気やなぁ」

「女々しいの間違いやろ」




自分でも解っとる。今の
関係が崩れんのが怖くて。
旭を失ってまうんが
怖くて…。何や、俺。
謙也以上のヘタレやん。




「…重症やな、俺」
白石side終了




『久々だ…』

「「いらっしゃいませ、旭
お嬢様」」

『侑士らは何処だ?』

「広間にいらっしゃいます」

『サンキュー』




俺は、足早に広間に
向かった。そして、勢い
よく広間の扉を開けた。




『お前ら!』

「「旭!」」

『景吾の様子は、どーだ?』

「部屋から出てこーへん」

『樺地まで閉め出されたか…』




つー事は鍵閉まってんのか。




『めんどくせぇ事しやがる』




普通の家なら蹴破るん
だがな。場所が場所だし
なぁ。




『…使いたくなかったが、
しゃーねぇな』




俺は、あるものを取り
出した。それは。




「「ピッキングツール?」」

『ご名答』




閉まってんなら、開ける
まで。景吾、俺は鍵開け
得意だってんだよ。




『待ってろや、景吾。
ウジウジしてんなら、
一発見舞ったるで?




ニコニコと言う俺。




「ほ…ほどほどにな…」




侑士が代表として言う。
さぁーて、行きますかね。



『さーてと…、こーして
あーして』




カチャ。



ちょろい。




『けーいご〜、カッケー
いとこが来てやったでー』



返事は…。




『せぇへんのか

「…帰れ」

『帰れ言われて帰る奴と
思うのか、オドレは』




泣きそうな顔しやがってる
くせによ。




「…嘘だ、いてくれ」




弱々しい声。何時ぶり
だろうな。




『負けたんだってな。
越前に』

「…あぁ」

『後悔してんのか?』

「…否」




だったら、なんでウジウジ
してんだよ。




「彼奴らに、最高の試合を
させてやれたと思うか…?」

『…ハ?』




何だって。あの景吾が…。




「俺は、彼奴らをしっかり
引っ張ってやれたと思う
か…?」

『……』

「支えられたと思うか…?」




プチッ!




キレた。俺の中で
何かがキレた。




侑士's side

「扉前まで来たはええけど…」

「「入れねぇ…」」

「どーすんだよ…」

「腹くくって…いざ!」




ドアノブに手をかけた時。



ガッ!!ドシャッ!


ビクッ!!




「旭…、ホンマに
殴りおった…」

『景吾!!?』




俺らに聞こえたのは、
旭の声やった。
侑士's side終了




俺は、景吾を殴り飛ばした。景吾の胸ぐらを掴む。




『景吾!!?』

「……」

『テメーは誰だ!』

「俺は…」

『テメーは景吾なんかじゃ
ねぇ!!俺の知ってる景吾じゃねぇ!!』




景吾は、こんな弱々しい
奴じゃねぇ。




『俺の知ってる景吾は、
弱くねぇ!』

「旭…」

『泣きたきゃ泣きゃいい
だろ!喚きたきゃわぁわぁ
喚き散らしゃいいだろう
が!何時までもウジウジ
してんじゃねぇぞ!
アーン!?』

「……」




まだ、黙りやがるか
コノヤロー。





『テメーは氷帝のキング
だろうが。200人の部員を
まとめるテニス部部長
だろうが!ちげーって
のか!!ア゙ーン!?』

「俺は…」

『俺の自慢できるいとこ
だろうがよ』

「!?」




景吾は、驚いて顔を
あげた。




『滅多に言ってやんねぇ
かんなッ!』




チッ!調子狂うぜ…。




『彼奴らだって、お前
だから着いてきたんだろ。
侑士も岳人もジローも
宍戸も滝もチョタも樺地
もよ、素直じゃねーが
日吉もな』

「……」




俺は、景吾のタイを
引っ張った。


『もう一度聞く。テメーは
誰だ』

「俺は、跡部景吾だ。
氷帝のキング、跡部景吾だ」




『…ッタクよォ。お前
らしくねぇ事抜かすなよな』

「悪ィな、旭。迷惑
かけた」

『ホントに、いい迷惑
だよ。あ、でも景吾の
半泣き見れたからいいや』

「おま…ッ!///」




オーオー赤くなって。




『写メも撮ったし〜』

「テメ、消せッ!!」

『顔赤いぜ?』

「待て、コラ!」

『ヤァダね〜、財前に
渡してブログに載せて貰う
から』




そういって、扉を開けた
途端。




「「跡部〜ッ!」」

「部長ーッ!」




涙で顔がクシャクシャに
なった奴等が雪崩れ込んで
きた。




『「ゥオッ!!」』




頭打った…。




「何だよ!お前ら!!」

「跡部ーッ!」

「景ちゃーん!」




俺は、抜け出す。




『そこで1人で何して
んだ?日吉』

「別に何もしてないですよ…」




似たように素直じゃねー
2年だな。財前か、
お前は。




『使え』

「何ですか、コレ」

『目から流れたもん拭け』

「!…ありがとう
ございます」




ホント、素直じゃねーな。彼奴らも、負けたらこう
なるのか?否、彼奴らは
勝つ。絶対、勝つ!!
打倒青学!

勝ったもん勝ちやーッ!!


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