かぜ

あ〜、苦し…。





『38、5度…、
しんどいはずだわ…』






定体温35度台には辛い温度。
だ〜…、クソ…。
昨日雨に濡れて帰って
きたからか…。
つか、喉乾いた…。
下に兄貴がいるハズ…。






『水…』






ヨロヨロしながら下に行く。






『兄貴〜…、水〜…』

「ん〜、ちょお待て〜…。
八神ッ!?歩いて来たんか!?」

『ん…』

「携帯鳴らすなり
あったやろ!?まぁ、ええわ。そこに座っとき」

『ん…』







思考回路がおかしくなると
素直になるんだな。人って。





「飲んだか」

『ん…』

「部屋戻ろか」

『ん…』






フラフラしながら部屋に
戻って寝た。
そっから、記憶はない。






ん…、どんぐらい寝た…?
つか、おでこが冷たいし…。
手、暖かいし…。








……え。
暖かい?







ガバッと起き上がった。







『ぐあッ!?』







頭が…ッ!?
すぐそこに、
ミルクティー色の
髪があった。






『寝てやがる…』






しかも、人の手握りながら。






『…綺麗だ』






女か、コイツ。
襲うぞ。






「…ん」







あ、起きた。






「あ、起きとったん?」

『何がしたかったんだ、お前』

「露希が風邪ひいたて、
オサムちゃんから
聞かされてん」

『で、部活は』

「……」





こいつ…。





『切り上げたな』

「…うッ」

『そんな子に育てた覚えは
あらへんで』

「スンマセン…」






全く、コイツは…。
言ったって聞かねぇし。





『バカ…』

「ちょっ…ッ!バカは
アカンて!!」

『うるさい、バカ』

「ううッ!」






頭、痛い。
薬。





『水…』

「水」






飲み掛けしかないか。






『よこせ』

「俺のや」





そう言いながら、口に
含みやがった。
にゃろう…。
って、待て。
近い。





近い近い!





近いって──






『!!?』






にゃろう…。






『テメ…』

「仕返し!」







水すらまともに
飲めねぇのかよ…。






『移るぞ』

「移ったら、露希が
看病してくれんねやろ」

『嫌だね』

「何で…ッ!」

『襲うから』

「ッ!?」






俺に口で勝てると思うなよ?
まぁ…、嬉しかったケド。
絶対言ってやんないがな。











かぜ

(悪いことばっかじゃない)






第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -