惚れたかも…




厨房で今日のオススメのチーズ
タルトを焼いていたら謙也が
戻ってきた。心なしか笑顔だ。




「今日も来たでオマケした子」



また来てくれとは言ったが…。



「次の日に来るとはな…」



正直、心の準備が出来て
なかったりする。昔は聖書なんて
呼ばれていたが、今はそんな面影
まったくない。



「白石店長、昨日の客眼鏡しとり
ますよ」




本当だ。似合うな。財前がそんな
事言うからつい注文された
コーヒーと一緒にケーキを
持って、彼女に近づいて
しまった。自分でもガキかと
思う。



「これ、どうぞ」

『え?』




驚いた顔で彼女は俺を見る。
それはそうだ、ケーキは
頼んでない筈なのだから。


『頼んでへんスよ?』

「否、頑張っとるお嬢さんに
俺からのご褒美や」



ご褒美って何なんだと自分でも
思う。そこまで知り合っても
いない奴が。なにか話題は
ないか…。



「課題なん?」

『あ、否ちゃうんスわ。
"仕事"なんスわ、俺の』

「作家さんなんか?」

『まだ駆け出しなんスけど』




駆け出し、か。自分にもあった
なぁと思った。



「ほな、邪魔になるから
俺行くわ」

『あ、ケーキあざした』



その時は衝撃だった。これが
ギャップ萌と言うヤツ
なんだろうか。



「どういたしまして」



そそくさと逃げるように厨房へ
戻る。ヤバイ、顔赤いかも
しれない。ドキドキしてる。
つい、床にへたれ込んで
しまった。



「ホンマ、ガキか。俺もう、
23やぞ…」



何なんだ、俺は…。





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