盗まれたのは、


『つまらない』



アタシがそういうと
白石は、ハ?って顔を
した。そして、アタシの
手元を見てあぁって
理解したらしい。



「つまらんて、その小説
がか?」

『うん、ありきたり
過ぎてつまらない』



ありきたりな台詞。
ありきたりな状況。
ありきたりな登場人物。
ありきたりな予告状。
ありきたりな展開。
ありきたりな告白。
ありきたりなラスト。
もう少し捻ってくれても
いいのに…。



『そう思わない?蔵』

「せやなぁ」

『流石、蔵。自慢の
彼氏〜』



何やそれ、なんて言い
ながら笑う蔵。だって、
高校卒業と同時に同棲
し始めたし?



「ちなみに結は
どういうのがえぇの?」

『ん〜…。誰もが考え
なかった状況で、誰も
予想しなかった物を
怪盗に盗んでほしいかな』



そういうと、蔵は結
らしいなって言って
笑った。



『そういう蔵はどう
なのさ』

「ん〜…、俺は何も
盗まず帰るわ」

『何で?』



何も盗まず帰るという
蔵の言葉が驚きだった。



『え、蔵だったら
ご令嬢の心盗みそう』

「そんなん盗んでどう
すんねん…。俺が盗み
たいんはこの世で
1つや。それも、
めっちゃムズいねん」



蔵の場合ホントにその
辺の女性の心を無意識で
盗んでそう、って直感で
思った。それにしても
気になる。蔵の盗みたい
めっちゃムズいもの。



『何を盗みたいの?』



「結」





それは予想外だった。
まさか、ここで言われる
とは思ってなかったから。



『アタシ…?』

「おん」



そして、蔵はアタシの
目の前に跪いて




「俺に、結を盗ませて
下さい」

『え…、それって
つまり…』

「俺と結婚して下さい」



嬉しくて、驚いて涙が
出た。



「俺の手を取ってくれ
ますか」



蔵は手をアタシに差し
出す。



『…ッ。アタシで
良ければ、喜んで…』



そういって、蔵の手に
自分の手を重ねた。その
まま、蔵はアタシの手を
引いて胸に引き込んだ。
そして、耳元で



「結の心は俺が
いただいた、やな」



そこで、アタシは確信
したんだ。




まれたのは、

(アタシの心とアタシ
自身)



†アトガキ†
何でしょうね、これ。
アタシの願望です
けどね!企画
ジューンブライド」に
提出。









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