タラシなアイツの意外な一面


図書室の窓から外を
除くとあちらこちらに
白ラン。そりゃそーか。
ここは山吹中だからな。
それだけで目立つのに、
群を抜いて目立つ奴が
1人。あのオレンジ頭は
必ずアタシの視界に
入る。タラシで女好き。
そういう噂しか聞かない。



「お嬢さん!1人で何
してんの?」



ホラ、またナンパしてる
よ。(見かけたの今日で
何回目だ?)声かけ
られた女子生徒もどこか
嬉しそうだ。



『…何がラッキーボーイ
だ。千石清純』



確か、テニス部だった
かな。見たこと無いけど。



今日も疲れた。何気に
今日は仕事多かったな。
こき使いすぎだぞ、
室長。電車はやっぱり
時間なだけに混んでいた。



『あ、ラッキー。
空いてる』



偶然にも空いてる席を
見つけた。珍しく
ラッキーと思ったら、
斜め前辺りにあの
オレンジ頭。



『まさか、一緒の電車
とは…』



そのまま次の駅へ行く。
そこで乗り込んできた
のはおばあちゃん。
しかし、誰も譲ろうと
しない。薄情者共め…。
譲ってやりたいが遠い…。



「おばあちゃん、どうぞ」



声をかけたのは意外にも
オレンジ頭。



「ありがとねぇ」

「ううん、大丈夫だよ」



…何だ、意外にいい奴
じゃないか、千石って。
アタシが思ってた千石の
イメージがガラリと、
いや180度変わった。
あの日から千石を
見かける時は、誰かを
助けている時だった。
それに、女の子に声を
かけるのも決まって落ち
込んでる子や困ってる子
だった。風の噂だと
亜久津のケンカを止めた
とか何とか…。



『嘘じゃん、タラシって』



いい奴なだけなのに。
そういや南も行ってた
っけ。南だけじゃない
か。東方も新渡米も
室町君も喜多君も壇君
も、決まって同じことを
言う。"アイツ、根は
いい奴なんだよ"って。
何て思ってたら…。



ドササッ!



『…』



……やってしまった。
落としてしまった。
しかも、盛大に。周り
には誰もいない。



『よっこいせ』

「大丈夫?」



ん?図書室には誰も
いなかった筈。何故、
聞き覚えのある声が
聞こえる?顔をあげると
目の前にはオレンジ頭。



『千石…』

「あれ、俺の事知ってる
の?倉田さん」

『否、それこっちの台詞
だから』

「あは☆」



笑い事じゃないだろう。
それより…



『何でいるの?』

「あー、廊下歩いてたら
ここから凄い音したから
何だろうってね」

『好奇心か』

「そんな所。手伝うよ」

『千石は優しいね』

「そうかな?」

『普通、わざわざ手伝わ
ないよ?近くにいても』

「あハハ」

『電車でおばあちゃんに
席を譲ったり』

「え!?」



ドサッ



『…あ』



てか何、この千石の
慌てた顔。



「み…、見てたの…?」

『元気のない女の子に声
かけたり』

「わー!!もう、いい!!
言わなくていい!!」



顔を真っ赤にして、その
場にしゃがみ込む千石。
不覚にも可愛いと思って
しまった。



「カッコ悪い所見られた
なぁ…」

『何で?カッコいいよ』

「!」

『人に優しく出来る
千石はカッコいいよ』

「…ありがとう、倉田
さん」



まだ赤い顔のまま千石は
微笑った。




タラシな

(人に優しかっただけ)





†アトガキ†
千石がこういう子
だったらいいなと言う
俺の願望。スンマセン。









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