不本意な想い


でた…。何で、でた…。
掃除、してたよな…。
しかも…。



『デカい…』



何故…、僕の部屋に
でたんだ…。そうだ、
新聞紙、殺虫剤、取って
こよう…。



「倉田?」

『!』



ドキッとした。後ろを
振り向くと木更津が
いた。



『木更津か…』

「顔、真っ青だよ?
どうかした?」

『…どうもしない』

「そう?」



木更津が腑に落ちないと
いう顔をしていたが、
そんなのもう知らない。
僕の部屋のドアを開けた
瞬間、ヤツが目の前に
いた。




『!!』




ガタッ!



僕が後ろに後ずさった、
その時。



スパァーン



誰かが新聞紙でGの
ヤツを叩き潰した。



「コイツのせいだったか」



ヤツをひっぱたいたのは
木更津だった。掃除を
して、木更津は腰が
抜けて動けない僕の
もとに来た。



「立てる?」

『…ムリ』



そういうと、木更津は
俺を抱き上げた。これが
俗にいうお姫様だっこ…。



「お姫様だっこ、
初めて?」

『当たり前だ』

「その割に取り乱さない
ね」

『驚いて声が出なかった
んだ』



本当にビックリした。



「大丈夫?」

『あぁ、大丈夫だ』

「何かあったらおいで
よ、鍵開けとくから」



……。普通はそこまで
される筋合いない。
だが、今回はそう
思わなかった。



『……寝よう』



そう思ってベッドに潜り
込むが、身体を虫が
這っているような妙な
感覚に陥った。
気持ち悪い…。



『…頭を冷やそう』



僕は、部屋を出て
談話室へ向かった。
そのまま、談話室にある
ソファに座り膝を抱え、
顔を膝にうずめた。



『…あー、何でこうなる
んだよ』



全て、アイツのせいだ。
黒光りしてるアイツの
せいだ。その時ふと、
頭に何かが乗っかった。



「やっぱり、気持ち
悪かったんだ」



頭に乗っかっている
のは、木更津の手だった。



『…笑うなら笑え』

「笑わないよ、倉田
嫌いなんでしょ?虫」

『…何で、知ってる』

「蝶とかも避けてたの
見かけたことあるしね」



不覚だ、木更津に
見られてたなんて。
まだ、観月とか不二なら
よかった。



「眠れないなら部屋に
おいでよ、倉田」

『アヒルがいるだろ』

「今日から家に帰ってる」

『……』

「はい、強制連行」

『うわッ!』



また、お姫様だっこ…。



『おろせ!』

「やだ」

『お前、強情すぎるぞ!』

「倉田もね」




言い返せない。



「無理しないでさ、俺を
頼ってよ」

『何で、僕が』

「倉田が出来ないこと
だってあるでしょ?」



その時は、木更津が少し
だけカッコ良く見えた。
何て、口が避けても
言ってやるもんか。




不本意な

(全てはアイツのせい)









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テーマ「人外ファンタジー」
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