子供のままじゃ気付いてくれない | ナノ

 目が覚めたらすること。
 顔を洗ってユニフォームに着替えて食事をとって。お日さま園とは全く違い、同じもので全て統一された無機質なこの場所に来てからずっとこれを繰り返している。誰が先にあの称号を手に入れたって父さんの目的が果たされたって、きっと兵器ではなくなるまでずっとこれが続いていく。つまらない。でも、父さんに恩を返すにはこれしか手段がないのだと思えば嫌でもこれを繰り返さないといけないと思うと同時に自分の出来る事の範囲があまりにも小さくて悔しくなる。
「またナマエが最後ね。」
 グラウンドに入ると、レアンがにっこりと笑って声を掛けてくれた。同じ様に笑って、目が合ったヒートにも「おはよう」と返してからグラウンドに視線を彷徨わせた。
「‥バーン様は?」
「かなり前にお父様に呼ばれたよ。」
「ふうん。」
 視線をあちこちに彷徨わすのを止めると、レアンの口元が弧を描きながら何か言いたげに動いている。少し首を傾げながら覗き込む様にレアンの顔を見るとグラウンドの端まで手を引っ張られた。どうしたのかと問う前に、レアンがにやにやと笑いながら繋いでいた手を両手で包み込んで、熱っぽい声で問うて来た。
「昨日は寝れた?」
「え?うん。」
「本当に?何もなかったの?」
「え、嗚呼‥。いつもの通り。そういう風に見られて無いみたい。」
「‥‥バーン様可笑しいんじゃないの。」
 眉間にしわを寄せた顔を近付けてくる。顔が近付く度にしわが増えていって、慌てて止めさせると次は頬を膨らました。どうしても気に食わないらしい。
「きっと妹だと思われてるよ。」
「毎晩毎晩行ってるのに!?」
「それってどうかと思うわ」とレアンが言い終わる前にレアンの後ろに影が落ちた。「危ない」と教える前に驚きの方が押し寄せて来て慌てて口を開いた時には鈍い音がしていた。
「‥っ!」
「レアン大丈夫!?バーン様やり過ぎ‥!」
「練習もしないで何を雑談してんだよ。」
「だからって殴らなくても!」
 頭を抑えながら痛みに悶絶しているレアンを余所に拳を握り締めて口元だけが笑っているバーンに文句を言おうとすると、目が笑っていない顔をぎりぎりまで近付けられた。
「で、お前が毎晩オレの所に来るのはこいつの入れ知恵か?」
「違うよ。」
 次は私の頭に鈍い音がした。痛い。殴られた所からじわじわと鈍い痛みが広がって、次ぐ様に拳の重みが伝わって来る。痛みを堪えながら当の本人を見上げれば何処吹く風。全くもって気にしていない。
 痛みに慣れたのか、レアンが涙目でバーンをキッと睨んで食って掛かりに行った。それを見ていると頭の傷みなんてどうでも良くなって、心臓の辺りに締め付けられたような痛みがした。
「‥ずるい。」無意識に呟いた言葉に内心驚いているとヒートが悲しそうな顔をした。何で、ヒートがそんな顔するの。
「ナマエは頑張ってるのにね。」
 いつまで私はあの人の恋愛対象外なのだろうか。
星に願いを