どうしようもないの
すきなの
「やなぎ」
「なんだ」
「すき」
「そうか」
「あいしてるの」
「そうだな」
あたし達は、きっと大人になりすぎたのだと思う。小さかった頃は大人になりたくて、一生懸命背伸びをして強がった。見合った人間になりたくて高いヒールを穿いてみたり慣れない化粧をしてみたり。同じ話題で盛り上がりたくて知りもしないニュースを必死に調べて一緒に笑った。
でもいつか、そんなものには限界が来るんだ。強がりは所詮強さにはなれず、ただ高いヒールに慣れ背伸びさえも困難だとは思わなくなる。知らないニュースは気にも掛けないくせに振られた話題には楽しくも無いのに笑顔を向ける。これがあたし達の夢見た大人なのだろうか。憧れた、強い大人なのだろうか。
「あたしをすてないでね」
「おまえこそ」
関係を繋ぎ止めておくための鎖の用な言葉を交わしながら、抱き合って眠る。本当に彼を愛しているのか、それとも依存が彼を離さないのか。答えを知るひとはいない。それでも毎日こうして一緒にいるのは慣れが物を言わせているのか。
ただ分かることは、抱き合った体温が本物だということ。その体温が、温かいということ
おわり
節操のない柳
mae tsugi