太陽は今日も昇る
「さっなだくーん!」
「たわけが!!今何時だと思っているんだお前は!!」
よく晴れた朝4時半、隣にある真田家の前で叫んだらすぐに返事が返ってきたのをいいことに、あたしは1年ぶりに幼馴染みを連れ出すことにした。宛て?家から10分の距離にある05号公園という変な名前の公園。01号も02号も見たことないのに、05号はある。まあそんな事は関係無いのだがとりあえず起きたばかりであろう真田を連れ出すことには成功したあたしは、コンビニで買った朝食のサンドウィッチを片手にベンチに腰掛けた
「元気だった?」
「ああ、それなりには生活している。なまえは、どうなんだ」
「あたし?普通。ぼちぼち、ってやつ?」
持っていたサンドウィッチを一気に口へ入れお茶で流し込む。お腹がいっぱいになったところで真田にペットボトルに入ったお茶を差し出すと無言で受け取ってくれた
ペットボトルのお茶を片手に相変わらず落ち着いているというかおっさんのような態度の真田を見ているとなんだか安心する。あたしたちは、昔となにも変わっていない。
小中高校大学、奇跡的に同じところを無事に卒業したあたしたちは1年前、ついに違う道を歩み出した。真田はテニスを続けているがあたしは、就職先の関係で去年から実家を離れ地方での生活をスタートさせていたのだが、はじめは寂しくて寂しくて、社会人だというのにあたしはよく泣いていた。それでも、真田にたるんでるとか言われたくなくて、必死に頑張ったな。なんて今考えるとバカらしい。
「真田さ、」
「なんだ」
だんだん日が昇り、ウォーキングをするおばちゃん達に青いわねとか言われながら、あたしたちはぼうっと上を見上げた。太陽は眩しくて、綺麗だ
「あたしが入社したての頃、なんかあったら太陽見ろとか言ってたよね」
「それがなんだ」
「あたしそん時さ、実は電話切った後相当笑ったんだよね」
思い出し笑いとはこの事か。あの時の電話の事を考えると今でも面白くて仕方がない。しかし一方の真田は心外だとでも言わんとばかりに眉間に皺を寄せている。まあ20年近く一緒にいたのだから今更そんなもの微塵も怖くはないのだけれど。むしろ面白いのだけれど。
「何故だ。」
ほら、不機嫌そうに言う。
そういうところが、昔から本当に可愛いな。と思っている(当時同級生だった幸村にそれを話したらまるでゴミ虫を見るような目で見られたけど)
「だってさ、普通なら空とか、星とか?まああたしらカップルじゃないから何とも言えないけど、同じ空を見てるんだぞーとか言えばいいのに。真田あの時真剣な声で、太陽を見ろ。特に日の出には生命体の精神状態を穏やかにする効果がある。例えば…とか言って科学的効果とかそんなの教えてくれたんだもん、そりゃ笑うでしょ」
「本当の事を言ったまでだ」
「いや、そうなんだけどさ。でも、助かったよ。あの時すっごく笑って、少しだけ回復したからさ。その後絶対負けないでやりぬく!って太陽に誓ったしね。今でもなにかある時は太陽に誓ってるんだー。だからあたし晴れって一番好きな天気!ありがと、真田」
本当は、真田が話を聞いてくれたから。なんだけど、そんなことは言わない。あたしが笑いながらそう言うと、真田が黙りこんでしまったので気分悪くさせちゃったか?と顔を覗き込むと、少しだけ顔を赤くした真田があたしを睨んできた。本当に彼は、かわいい。
「お前は、なまえは、打たれ弱いからな。どうせ無理ばかりしていたのであろう。」
あたしがそんな事を考えていると、真田がぽつりと言った。なんだ、隠してた筈だったのに結局はバレバレってわけですね。たるんどる、なんてお決まりの台詞を言いながら溜め息を吐く真田の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら、あたしは立ち上がった
「じゃ、晴れてるし少し散歩したら帰ろーかね。」
真田の言葉を誤魔化すように笑みを浮かべると、あたしより20センチ以上高い彼も立ち上がったのでぐうっと背伸びをしてみせたらそのまま公園のど真ん中で抱き締められた
「無理をするな、せめて俺の前では。いいか、馬鹿者」
こんなこと、慣れてるわけないのに。顔を真っ赤にしながら格好つけた言葉を吐く真田は本当に可愛くて、変わっていなくて。あたしの大好きな真田だった。
「ありがとう、真田。でももし疲れたら、その時はあんたがあたしの事慰めてね」
そんな事を言いながら、20年一緒にいて初めて唇をあわせた
真田の後ろに見える、太陽が綺麗だ
( そういえばさ、あんたいつからこんな大胆になったわけ? )
( いや、幸村が… )
( あんたは未だに幸村の下僕なのね )
お題 晴れより
「 太陽を見ろ 」
20120724 提出完了
素敵な企画サイト様に投稿させて頂いた作品のログです。
最後に、蓮咲様へ
3万ヒットおめでとうございます。
なたね