「こんなの、しか…出してあげられないけど…」
直ぐに出せたのは昨日の残りのシチューにカリカリに焼いたパンだけ。それにオレンジジュース。青年の横の物体は何を食べるか分からなかったので、とりあえずこの前買ってきたりんごといちご、チェリー。
あたしもお腹も空いてたし、丁度いいかと食卓に二人…一人と一匹?を案内した。そいつらはは終始家の中をきょろきょろと見渡し不思議そうに眺めていた。本当に、どこから来たんだろう。
「頂きます…」
青年は、スプーンでゆっくりとシチューをすくい、口に運んだ。その様子は、なんだかとっても綺麗だった。
(ちょ、よく見ると、この青年…い、イケメン?)
食事する様子をじいと観察していたら、なんだか、ついつい魅入ってしまう顔立ち。これで電波じゃなければな…いや、でもそんなところがいいのか?
「あ、美味しい…」
あたしが一人考え込んでいると、青年が口を開いた。シチューが入っていた皿をじい、と見つめながら、ぽつりと。見れば既にシチューの入っていたそれは空だった。
「もっと、食べる?」
「いいの?」
「良いよ、どうせ食べるのあたし以外にいないしさ。家に客なんて、久しぶりだし。」
言って立ち上がると、その青年と物体がなにやら会話をしているのが耳に入った。とことん、電波なんだな。
いっぱいのシチューを皿に入れ、再びテーブルにつくと、青年がこちらをじい、と見た。
「な、何」
「あ、いや、僕の友達も、木の実、美味しいって」
「友達?」
「こいつ」
青年は、その物体をぴょこっと机の上に乗せた。丁度りんごを食べている途中だったらしく、両頬いっぱいに実を詰めていた。
あ、可愛い。
あたしは、ふっと微笑んでしまった。いかんいかん、知らない日とに同情したらいかん!
でも、なんだか悪い子たちではない、と、思った。変だけど。
「なまえ、家族は?」
ふいに、青年がそんな事を聞いてきた。家族、か。
「父さんも母さんも、海外出張ばっかで家にいないよ。兄弟は、お兄ちゃんひとりいたけど、結婚していなくなっちゃった。」
だから、あたしは四六時中家にひとり。
そんなあたしも、友達と遊んでばっかりだから殆ど家にはいないんだけれども。
「そっか。なまえも、僕と同じなんだね。」
青年は、また、にっこりと微笑んだ。
やっぱり、イケメンだ。
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