「みょうじーまた遅刻かー?次遅れたら指導入るぞーって、お前指導受けすぎだ停学くらうぞー」

「さーせん!道端にりんごが落ちてたもんで」

「もっとマシな嘘をつけー」

ははははっとクラス中が笑い声をあげた。俺の席の隣は朝、いつも空席で朝のショートホームルームが終わるくらいに毎回担任の同じ言葉に理解の出来ないような見え据いた嘘が聞こえたかと思えば、その席は埋まっている。俺の隣の席のみょうじは時間というか生活自体にとてもルーズな人物である。何故か今年2回目の席替えも隣になり毎回俺はこの茶番を直ぐそこから眺めているのだが、非常に迷惑だ。学校に遅れてくるという事は社会生活に馴染めない、もしくはそこから外される事を意味する。他人に迷惑が掛かるという時点でも彼女は社会人失格だ。何も彼女が遅れる分には構わない。しかしそれによってクラスのショートホームルームの進行が遅れ次の授業に響いてくる。

何度も言うが、迷惑だ

「あ、ねー佐藤、ちょっと教科書見せてくんない?」

「お前最早教科書とか持ってくる気ねえだろ」

「教科書とか買うお金無いんだってー」

そしてみょうじはいつも教科書を持ってこない。買う金が無い?ならばその片手に握られたも最新型の携帯電話は一体なんだと問いたくなる。笑いながら一時間目の授業を通路を挟んだ隣の佐藤に見せてもらっているのも日常茶飯事。今さら気にする事ではない。

しかし、みょうじが俺に教科書を見せてくれと頼んできたことは、一度も無かった。

お陰で迷惑は被らず授業に集中できて申し分無い。しかし楽しそうに物理の教科書を見ながら佐藤とあーだこーだ議論するみょうじは非常に耳に障る。みょうじは間接的に、いつも俺の邪魔をしてくる

「あーかーやー!」

「あ!なまえ!」

「と、柳くん?だっけ?今から部活ー?」

極めつけは部活。帰宅部のみょうじはいつも学校が終われば直ぐ様帰宅する。そしていつも俺の一歩前を歩いては玄関で赤也と鉢合わせし少しばかり話し込む。部活にはギリギリ間に合うが準備などは満足に出来ない。そしてみょうじは赤也と小学校の頃の知り合いなのかとても仲が良い。赤也もみょうじを名前で呼ぶ。先輩という単語も敬語も使う事なく親しげに話すのを俺はいつも横から見ているだけ。話す必要が無いから話さない。俺には何の得もない。しかしみょうじは毎回俺の名前を疑問符をつけながら呼ぶ。まさか同じクラス、ましてや隣の席なのになのに知らないのかと初めは疑ったがどうやら本当に覚えていないらしく物覚えが悪いという点についても、非常に腹が立った。

そして一番腹が立つのが、


「迷惑ばっかり掛けてごめんね」


なんて言葉を毎回、去り際に残していく事だ。そして彼女は帰っていく。最近はこれを繰り返すことが頻繁にある。自分の生活リズムを狂わされているようで、否狂わされていてしかもしっかり悪びれているというところが俺の怒りの沸点を曖昧にさせる。

それから、彼女が帰った後いつも赤也は俺を見て同じことを言う



「先輩、本当なまえの事好きっすよね」

なら話しかければいいのに、と赤也は言う。赤也は本当に、頭が悪い




後日、彼女のデータを集めて分かった事は彼女には4人の妹弟を持つ長女であり母親とは死別、父親とは絶縁状態で最低限の生活費だけを受け取って生活し父親には頼らず妹弟の面倒を見ているということ。週に6日バイトを遅くまでしているという事。









おわり
――――
つまり柳は好きなのに気付かないってやつです。というよりは認めたくない?苦手なタイプがルーズな人なだけに認めたくない!けど周りから見たらやっぱりバレバレー的なお話でした


mae tsugi


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