マネージャーなんてくそくらえだ!ちきしょうめ!


「今日もお疲れさま、悪いな、初日からずっと働かせっぱなしで」

「いえ、そんな…大丈夫っす」

なわきゃねえだろうがブウウウウウウスッッ!と、あたしは頭の中で激しく毒吐きながら表面上の笑顔でにっこりとテニス部部長さんに応答した。今日は土曜日、明日は休み。あたしがマネージャーを始めてから5日目がちょうど終了したところだった。

正直、仕事内容はとっくに覚えた。覚えれば単純な作業の繰り返しだし良く言えば見学に来てくれている御姉様方を近くで見る事も出来る。あわよくばあたしが自費で買ってきたジュースなんかを渡しながら挨拶すると喜ばれてあたしの点数もアップする。そして何よりテニス部目当てだと思われなくて済む。美女とお近づきになれるなんて最高の地位だとは思う。確かに思うんだが、しかし、しかし

「ぜんっぜんサッカー部いけねええええよおおおおおうっっ」

思わず最後の片付けをしながら叫んでしまった。そう、あたしは一週間まるまる、疲れと終了時間の関係で全く自分の所属する部活に行けていないのである。我らが新部長田村先輩は早めにーとかなんとか言っていたけれどテニス部めそんな気さらさら無いだろう。お陰さまで毎日部活には参加出来ず、帰宅した後夜に河川敷を走る事くらいしか出来ていない。これじゃあ新人戦どころか紅白戦にさえ出れないかもしれない。

それもこれもどれも

「なまえ、今日もお疲れさま」

「全部お前のせえええええい!!!」

「ちょっと、いきなりそんなに誉めないでくれよ、なまえ」

「誉めてなあああああい!」

幸村精市という人間の皮を被った魔王のせい。
突然マネージャーを始めたあたしに毎日さも何年もこの部のマネージャーをしていたかのように仕事を押し付けてくるのがこの魔王様。何度ぶっ飛ばしてやろうかとも考えたのだけれど、誰かが五感を奪われるとか言っていたのを聞いた途端震えが止まらなくなってしまったので作戦失敗。普通に仕事をしているだけでも遅いとか鈍いとか言ってくるくせに紙切れに書いていない仕事まで押し付けてくるような横暴さ。お陰さまで対抗心というか反抗心というかそういうものが生まれ今ではありきたりに幸村と呼ぶようになった(様とか先輩とかつけなくなったのがあたしの中の最大の抵抗。これ以上は無理)

ちなみに他にも、部活中にまさかおっさんやら似非眼鏡やらやなちんやらデブハゲ銀髪と呼ぶわけにもいかずちゃんとしっかりばっちり名字名前で呼んでいたらそれが数日で呼び慣れてしまった。

(それでもイライラしたらデブとか童貞とか言うけどネ!)

「しかし、みょうじもたいしたものだな」

「あ、やなちん」

やなちん以外。

「お前は部員の呼び方を統一したと思っていたのだが」

「やなちんは特別なんだよ!なんか、ぽけ〇んみたいじゃん?」

「え、蓮二だけ特別とか認められないんだけど」

「じゃあ幸村はせーいっつぁんとかは?」

「一回死んどく?」

あっ今目を向けられただけで感覚2個くらい持っていかれた。ねえ、怖いよ、怖いよ幸村くん。確かにおっさんテイストではあったけれども。まさかそんなに怒るとは思っていなかったんだよ。なんて心の中で必死に弁解するあたしの気持ちも虚しくバチコーンッと頭を叩かれた。あ、痛い、え、血?

「ちょ、幸村さん、血が「確かになまえのわりにはよくやっていると思うよ」

え、全無視いいいい?!

「みょうじのわりには、というよりは女子にしては。だな。この量の仕事は1年生部員が日替わりに3人がかりでやるものなのだが。」

「まあ、サッカー部だしねなまえは」

「ああ、そうだな」

しかもあたしの努力サッカー部だからの一言で片付けられてしまう感じ?え、なんだろう突然やっていけない気がしてきた。まだ5日だけどやっていけない気がしてきた。というか本当に何故あたしはこんなに一生懸命この部活の手伝いをしているのだろうか。誰か早くこの疑問に答えてくれいや本当に。あと、血が止まらない

「でも、なまえだから俺らも任せられるんだけどね」

「そうだな。それは、間違い無いだろう」

それでもこんな事を言ってくれちゃうもんだから。単純なあたしはやっぱり初日に感じたみたいに今日も、頑張れるかもなんて思ってしまった。駄目だ、意思を強く持てあたし。でもやっぱり、嬉しいんだよな。

なのでお礼の言葉の代わりにふたりの頭を思いきりバチコーンッと殴った

あたしの愛だよ、有り難く受け取りやがれ






「あ、なまえ、明日どうせ暇だろ?1時に駅前集合で」

その後思いきり幸村に仕返しを受け(五感のうち4つは無くなったかもしれないが恐怖で口が開けない)、にっこりと明日の日程を勝手に決める彼の笑顔は天使のように眩しかった


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