隣人の、おじさん?



「え?…う、うわあー…」

みょうじなまえ、全裸での起床。隣には同じく全裸で眠る大学の後輩が1名。名前は幸村精市。朝だからとかそういう理由ではなく純粋に単純に、理解が出来ないかもしれない。しかし分かる事はただひとつ

や ら か し た

「ちょ、幸村?!起きて!起きて!」

「…んん、…うるさいな…」

慌てて横にいる幸村を叩き起こすと眠たそうな気だるそうな声が返ってきたものだからあたしは一人パニック状態。何故、彼が横に全裸で寝ているのだろうか。いや、それは勿論セックスをして一夜を共に明かしたからなのだとは思うのだけれど。何の経緯でそうなったのか、あたしは全く思い出せないのだ。とりあえず起き上がってパンツとブラをして、のそのそと部屋を歩いてみる。机の上には昨日の会議の資料と数枚のメモ。これには見覚えがあった。あたしが中心のチームで進めているプロジェクトの中間発表で使うための準備物。そしてその横のメモは上司に報告を出した際のダメ出し。成る程大体の経緯は読めた。恐らくあたしは昨日会社が終わった後幸村が一人で暮らすアパートにやってきて会社での愚痴、相談を兼ねて久しぶりにふたり飲み会でもしていたんだろう。そして床に転がっている数本の焼酎瓶を見る限りストレス発散のためにぐでんぐでんになるまで飲み、結果、そのままヤラカシタ、といったところだろうか。

ううん、我ながら最高の黒歴史になりそう。しかも相手が大学時代の後輩だなんて、誰かに知られでもしたらどうなるか分かったもんじゃない。今日が休みで良かった。ここはばれないように早々に退散して、色々無かったことにしよう。

なんとか冷静に答えを導き出したあたしは急いで服を着替えすっぴんなんてお構い無しに荷物を整理し、一応部屋も適当に片付け出ていく準備をした。未だ寝ている幸村は放っておくことにして、あたしはゆっくりと静かに玄関へ向かった。

あと少し、もう少しでげんか

ピンポーン
ピンポンピンポン
ピンポーン

「チッ、…誰だよこんな時間にうるさいな…って、あれ?なまえ先輩、こんなに朝早くから、一体どこに行くのかな?」

誰かの壮絶なインターフォンコールにより脱出は失敗ししかも幸村が相当な不機嫌になるという最悪の状況が生まれてしまった。そんな事をする輩は一体誰なんだろう。あたしは半裸の幸村の横で彼がチェーンの掛かったドアを開けるのを待った。そうしてガチャンという勢いづいた音と共に「誰」というドス黒い幸村の声が3階中に響いたのだが。


「朝早くにすまない」


どうやら隣の家に住んでいるおじさんのようだった。しかしこんな朝早くに何の用で幸村の家を訪ねて来たのだろうか。別にうるさい音を立てた覚えも無ければ幸村が苦情を言われるような生活をしているとも思えない。

盗み見るようにちら、と幸村を見ると、彼は至極面倒臭そうにゴミ虫を見るような目で少しだけ開いたドアから見える隣人のおじさんを見ていた。

え?そんな目で年上しかも隣人を見ちゃっていいの?幸村くんよ。

「真田…死にたくて来たって事でいいんだね?」

そして年上に向かってのまさかの発言。





どういうことだ?







つづく




泥酔、記憶、そして隣人?
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