どうしてなんでしょう
この状況は


「えええあっちゃんいかないの?!」

「行かない」

「何故?!昨日までは行くって言ってたじゃん!!」

「…急に用事が出来たの」


みょうじなまえ、のっけから大ピンチです。というのも、先日幸村大先輩にアドレスを教えたところ終業式が終わり次第一緒にケーキバイキングに行こうと直ぐに連絡がきたのはいいものの、元々はやなちんと行く筈だったあたしはやなちんも行かないかとやなちんに聞いたらいいよと言われたのだがそれを幸村大先輩にお話していたところでちょうど通り掛かったおっさんが興味を示したものだから仕方ねえ連れてってやるよ童貞。みたいな形で決行が決まったのだけれど。途中でそれがどんなに恐ろしい事かという事に気がつき(特にファンのお姉さまとかお姉さまとか)、慌ててあっちゃんを誘ったらいいよと言ってくれたにも関わらず当日の今日、しかも放課後、断られたわけで。これは非常にまずい。もしこんな事が学校に知れたら赤紙貼られて卵ぶつけられちゃうよまずいよやばいよ、しかも最悪なのが助けてくれる王子様のひとりもいやしないって事かな!まあどちらかと言うと大丈夫?と声を掛けてくれるたくましいお姉さまの方が嬉しくて飛び付いちゃう…っていかんいかん話が逸れてしまった。救いは明日から夏休みという事なのだけど、夏休み終わったら机無くなってそう。

「どうしよう、どうし「あ、なまえ早く出てきてくれる?」ノオオオオオオオウ!」

野生の幸村大先輩が(後ろにおっさんを引き連れて)現れた

「みょうじ、精市と弦一郎が来たぞ」

「ノオオオオオオオウ!」


タイムオーバーのようです。






「ほらなまえ、あんなに来たがっていたケーキバイキングなんだからいっぱい食べなきゃ」

「む、なまえ。お前はこんなものばかり食べておるのか?たる「弦一郎、あちらに宇治金時ケーキとやらがあるようだ」

「何っ」

というわけで、結局4人で来ましたケーキバイキング。辺りを見渡せば美しい私服の大学生らしき御姉様方や愛らしい御姉様とゴリラのようなオスのカップルが数組、そしてうちの制服を身に纏った天使(という名の美人な先輩方)で溢れ返っている。奥の方に見える流行りのスウィーツ男子を気取ったブッサイクな男の集団を全無視したとすると、この店内に男はあたしと一緒に来たこいつらのみ。しかも案の定幸村大先輩とかやなちんのおかげで聞こえる周囲からの小さい悲鳴。同時に耳にはいるあの女誰よ発言。泣きそうだ。言わずもがな、あたしは泣きそうなのだ。

ため息もそこそこに、案内された席につくとおっさんが只でさえキツい目をつりあげながらあたしの正面に座った。その横にやなちん、あたしの横には幸村大先輩。囲まれて逃げられないという現実はもう気にしないでおこう。

「今から120分、俺達は好きなものを取ってきて食べたり飲んだりして良いって事だろ?」

「そうなのです幸村大先輩!ところで何故おっさんはそんなにつり目なの?いつもの3倍老けて見えるからキモいよ」

「な、なんだと?大体、女子ばかりではないか!」

「だから?あたしもいたいけな女の子なんですけーどー」

「わ、分かっておる!!」

なんかもう最高に面倒くさいおっさんは無視して、とっくに席を立った幸村大先輩とやなちんを追って席を脱出し大量に並べられた可愛らしいケーキ達の元へと向かう。流石最近のケーキはデザインにも物凄く凝っているらしく、バイキングだからと言ってバカには出来ないクオリティ。しかし、どれも美味しそうだな…ここはやっぱり定番の苺ショートから手をつけるか…

まだ空な皿にひとつめのケーキを乗せようとトングを取ろうと手を伸ばすと、そこには意外にもやなちんが既に苺ショートを皿に乗せ終えトングを戻すところだった

「あ、やなちん」

「何故お前如きが苺ショートなんて可愛いもん食おうとしてんだよカス、とでも言いたげな顔だなみょうじ。しかし生憎ケーキは誰が何を食べようと自由だ」

「くっ…言い当てられた…」

「お前も早く取れ、残り3つだ」

「わ、わかってらい!」

そう言ってあたしがやなちんから奪ったトングで苺ショートをゲットするのを見届けたやなちんは満足げに席へと戻っていった。てかもうそんなに?計画的だよねやなちんてば本当に。普通ならどれにしようかなあ迷っちゃうなあ、あっあのケーキ可愛い!あ、これも!でも全部は食べられるか不安だしいーとか思いながら選ぶでしょ、そこもバイキングの醍醐味でしょやなちん。

そんな事を悶々と考えながら目の前にあるケーキと格闘していると、その先にあたしと同じように悩む姿が目に入った。それはまさしくあたしが先程解説した理想像そのままの姿であり模範だった。ほら、そうそうあそこにいる背の高めの成人男性のように…

って、

「うむ、迷うな…」

「え、童貞は消えて?視界どころか世界から消えて?あたしの理想も妄想もぶち壊すとか消えて?そういうのって美しい御姉様とかイケメンがする事であっておっさんがする事じゃないから」

おっさんだった。

その姿のせいでこれ以上なにかを選ぶという物欲が消え去ったあたしは適当に紅茶の入ったコップを片手に席に戻った。席には既におっさん以外の二人が座っており何やら部活だかなんだかかんだかについて真剣に話し合っている様子だったので、

空気を丸投げして横に座ってみた


「みょうじ、お前があえて空気を読まないということは分かっていた」

「そうだよね、なまえが空気とか、読めるわけないもんね?食べるもんね?空気でさえ」

結果
こんな罵声を浴びせられました。なので悔しさ紛れにその後なんだか初体験を終えた硬派を気取ったようなテンションで帰ってきたおっさんに同じように罵声を浴びせたら頬に一発喰らいました。よ、避けきれなかった…

「なまえって無謀な事が好きだよね、まあ、そんなところも嫌いじゃないんだけど」

「さて、食べるとするか」

「うむ」

そして痛がる愛らしいあたしを置いてとっとと食事に取り掛かる所謂立海の3強(御姉様たちがそう呼んでいるのを聞いた)あたしには3凶にしか聞こえなかったという気持ちは心にしまい、虫歯でもないのに痛む頬を押さえながらあたしも食べたくて仕方がなかったケーキにありついた




( お、モンブラン美味しいっ )
( あんまり食べると丸いブタみたいになるよ )
( …!! )



つづく
( 若干この回続きます )


ルソーの助言
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -