最近の若いのはクール過ぎだろ!




跡部に言われた通り、2年生のひやしたけしに会いに行ったあたしはどうしようもなくわくわくしてきた。とにかくあたしに興味がない。うざったそう、でもきっとそれでいて絶対に優しい!

あんなに面白い子がいたなんて、この学校もまだまだ捨てたもんじゃあない。とりあえずこの気持ちを跡部に伝えに行こうと休み時間が始まるや否や彼の教室のドアを開けたら先程すり替えた日の丸弁当があたしの顔面めがけて飛んできた。ぐちゃっと酷い音がして、案の定あたしは一瞬息が出来なくなって。更にぐちゃっとその弁当があたしの顔面を離れ床に落ちると視界が明るくなったと同時に、あたしの目の前には死ねと言わんばかりに表情を歪めたあたしの会いたかったひと、跡部が仁王立ちしていた。



「あーとーべー!」


顔面についた米粒なんて後で流せば問題ない。今はとりあえずあんな面白い子を紹介してくれた恩人に礼を言わなければ。そう思って一歩踏み出したら今度は汚いという悪態の元頭部を思いきり殴られた。相変わらずあたしへの愛が大きいんだな跡部よ。しかしこの米粒を取り払わない限りきっと話をしてもらえないだろうと考えたあたしは冷たくなった米粒を取って口に入れながら跡部を見た


「お前、ほんっとうに人間として終わってるぜ…」

「可愛いレディの顔面に弁当投げつける変態も同じだと思うけどね!てか跡部よ、あの可愛い少年何部?」

「ああん?日吉か?俺と同じっつったろ」

「お前何部?」

「お前…」

「興味沸くもの見つけるとそれ以外の事忘れちゃうんだよね!あたしったらドジっ子!」

「死ね」

そして変わらずあたしに物凄く冷たい跡部をよそに、ついに顔についていた全ての米粒を食べ終えたところで、惜しくも次の授業が始まるチャイムが鳴った。くそう、なんのためにここに来たか分かんないじゃないか。なのでチッと盛大に舌打ちしてみるとイライラしたような顔つきの跡部があたしの首を思いきりつかんで絞めた


「いいか、俺様はテニス部だ。それと日吉もテニス部だ。あいつに会いたきゃ放課後テニスコートに来い。分かったな?あぁん?」

「く、くるひぃっわはっはわはっは( 分かった分かった! )」


なんの躊躇も無しにあたしの首を全力で絞める跡部から解放され、あたしは若干むせ返りながら教室へと戻った。くっそ跡部め明日下駄箱に不幸の手紙詰めてやる!そう意気込んで教室に帰り自分の席について教科書を取り出そうと机の中に手を入れたら、バラバラと音を立てて黒い封筒に入った手紙が何十通も床にばらけた。丁寧にも全ての手紙の表に不幸の手紙と手書きで記されたそれを拾い集めてゴミ箱に投げ捨て放課後どんな復讐をしてやるか考えながら苦手な数学の授業に耳を傾けることにした。







「ほんっとうに、やめて下さい。うざいし鬱陶しいし迷惑なんで」


そして放課後結局授業を聞くことを諦め全力で手掛けた特製変態ボード(跡部の半裸写真つき)を掲げながらの跡部への仕返しがてらひやしたけしを見に行ったあたしが大声でひやしと叫んだ時の彼の反応がこの一言。そんなシャイなところも可愛いのだけれど、個人的にまだ学生なのだから思いきり声をあげたりとか、笑ったり怒ったりすればいいのにと思う。彼はいつも静かにあたしに迷惑を訴える。

でもだからこそ、あたしは彼が大声出したり、笑ったりするところを見たいと思った。それを見るまでは、どうやら彼にへばりつくしかなさそうだ。







おだいより


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