君とならそう、いつまでも






幸村くんの風邪も治って、テニス部の大会も先日無事終了した。立海の成績は勿論全国一位、そして幸村くんはなんとそのテニス部の新部長になり、いっそう忙しい毎日を送っているらしい。そしてあたしは、あの日以来彼に会うこともなく、いつも通りの日々を過ごしていた


あの日、幸村くんの家で全部聞いた。幸村くんは、あたしの事を本当に気に入っていた、らしい。図書委員だったあたしを図書室で見かけたのがその始まりとか言われたけど、あたしは彼を見た覚えは無い。まあ、とりあえずそれで、そんな顔と名前くらいしか分からないあたしのことを部活で話していた時にたまたまあたしに遭遇した事のあった仁王さんが少しばかり大袈裟に、具体的に言うと屋上で出逢った美人がクリームパンをくれてしかもちょっとつっこんだ話までしたので親密な関係になった(実際はクリームパンを奪われ少し成績の伸び悩みについて話しただけ)と言うものだから、あの時あたしが仁王さんを知っていると言った時、ついイライラしてしまった。という事なのだが。


「いや、つい。で済まされる恐ろしさじゃなかった」


「どうしたみょうじ、確かに授業中にぼうっとすることはつい、じゃ済まされないぞー」

「…げえ」


なんて、授業中に考えていた最後の言葉が口に出てしまったらしい。あたしは途端クラスの笑い者になってしまった。最悪だ。


「はあ…」

「あんた最近馬鹿ばっかりだねえー」

「幸村くんとうまくいってないんでしょ?」

「は?」



友達にはこんな事を言われる始末。そう、あの日、幸村くんに抱きついて…抱き合った、後、何も無かったのだ。仁王くんの話を聞いて、あたしの事を最初から気に入っていたとは言っていたものの、だからどうという話には発展せず。いや勿論あたしが彼に何を言うこともなく。以後何をするわけでもなく、連絡も音沙汰もなく、殆ど元の平凡ライフに戻っていた


「ま、平凡が一番、なんだよね…」


それだけ言って次の授業の教科書を出そうと教室を出てロッカーを漁る。何度ついたかも知れない溜め息を再び吐きながら。あたしは平凡な少女だ。どこにでもいる、普通の





「ねえ、」


「え、?」



教科書を出し終わってロッカーに鍵を掛けると同時に聞こえた優しい、聞き慣れた声があたしの耳をくすぶった。その声を、姿を、きっとあたしはずっと待ってた



「君、みょうじさんだよね?突然だけど好きなんだ。付き合ってくれる?」



見上げるとそこには、あたしがずっと見たかった笑顔があった。あたしを安心させる最高の笑顔が、そこにあったから。あたしは人目も気にせず学校一のモテ男に抱きついた


ああ、さよなら平凡ライフ。
でも毎日、その綺麗な笑顔を見られるのならば、そんな生活投げ売っても良いかもしれない。なんて思うあたしは既に彼に侵食されているんだ

す き だ よ 、 真っ黒な 王子様











おわり

お題 「腹黒と平々凡々」より
提供元 だいすき様


――――
なんとなく書きたくなってしまって二日で書き上げてしまったどうしようもないお話でした。あまり腹黒な幸村がいないのですが…すいません。全然中身ないですね…
腹黒!とお題を見つけた時衝動的に書きたくなってしまったお題でした。

ありがとうございました




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